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汽笛
「汽笛〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
汽笛の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「父」より 著者:芥川竜之介
るうちも、気が気でない。
生憎《あいにく》、空は曇っている。方々の工場で鳴らす
汽笛の音《ね》が、鼠色《ねずみいろ》の水蒸気をふるわせたら、それが皆|霧雨《きり....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
銀灰色の靄《もや》と青い油のような川の水と、吐息《といき》のような、おぼつかない
汽笛の音と、石炭船の鳶色《とびいろ》の三角帆と、――すべてやみがたい哀愁をよび起....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
のおのずから崩《くず》れる音らしかった。
その内に八時の上《のぼ》り列車は長い
汽笛を鳴らしながら、余り速力を早めずに堤の上を通り越した。保吉の捉える下《くだ》....
「或る女」より 著者:有島武郎
た。しばらくすると若者は桟橋の群集の間に船員の手からおろされた。
けたたましい
汽笛が突然鳴りはためいた。田川夫妻の見送り人たちはこの声で活を入れられたようにな....
「或る女」より 著者:有島武郎
うっすらと水のように澄みわたった空に消えて行く。履《は》き物《もの》、車馬の類、
汽笛の音、うるさいほどの人々の話し声、そういうものは葉子の部屋をいつものとおり取....
「星座」より 著者:有島武郎
も手を上げたり下げたりしたかと思うと、婆やは飛び上らんばかりにたまげさせられた。
汽笛がすぐ側で鳴りはためいたのだ。婆やは肥《ふと》った身体をもみまくられた。手の....
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
なる友人へ急用の端書《はがき》を出すためである。 キロキロと笛が鳴る。ピューと
汽笛が応じて、車は闇中に動き出した。音ばかり長い響きを曳《ひ》いて、汽車は長岡方....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
本能的に身の毛をよだてながら正気になった。 鋭い音響は目の下の海産物製造会社の
汽笛だった。十二時の交代時間になっていたのだ。遠い山のほうからその
汽笛の音はかす....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
、山鳥。声は梟、山伏の吹く貝、磔場の夜半の竹法螺、焼跡の呻唸声。 蛇ヶ窪の非常
汽笛、箒川の悲鳴などは、一座にまさしく聞いた人があって、その響も口から伝わる。…....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
て、やおら立ち上った。胴の間には既に眼を覚したものが二三人居る。 起きろ野郎共、
汽笛が鳴ってらい。さ、今日ですっかり片付けて仕舞うんだ。 而して大欠伸をしなが....
「私の活動写真傍観史」より 著者:伊丹万作
きくもない駅の構内にあるわけだから、駅の中心からいくらも離れていない。したがつて
汽笛の音、蒸気の音、車輪の音、発車のベルの音その他、すべて鉄道事業の経営に付随す....
「取舵」より 著者:泉鏡花
たる。 まさにこの時、衝と舳の方に顕れたる船長は、矗立して水先を打瞶りぬ。俄然
汽笛の声は死黙を劈きて轟けり。万事休す! と乗客は割るるがごとくに響動きぬ。 ....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
らの垣根には咲いている、とメトロポリタンホテルは近し、耳|馴れぬ洋犬は吠えるし、
汽笛は鳴るし、白い前垂した廚女がキャベツ菜の籠を抱えて、背戸を歩行くのは見えるし....
「西航日録」より 著者:井上円了
上らんとし、午前八時半、新橋を発す。ときに千百の知友、学生の余が行を送るありて、
汽笛の声は万歳の声にうずめられ、秋雨蕭々のうちに横浜に着す。ときに拙作二首あり。....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
じらとするところこそすめらみくになのである。) ときどき雲煙前路を遮るために、
汽笛を鳴らして過ぐ。潮流、暖を送り来たる。午時、一声の雷あり。腰折れ二、三首、左....