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沁
「沁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
うばい》たちの顔を思い出すと、遠い他国へ流れて来た彼女自身の便りなさが、一層心に
沁《し》みるような気がした。それからまた以前よりも、ますます肥《ふと》って来た牧....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
ったままで唾をはき捨てながら馬の始末をするとすぐまた外に出た。雨は膚《はだ》まで
沁《し》み徹《とお》ってぞくぞく寒かった。彼れの癇癪《かんしゃく》は更《さ》らに....
「星座」より 著者:有島武郎
しょう》の音を園は好んで聞いた。上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に
沁みる音だと思ったり、自分の寺の鐘を撞きながら、鳴り始めてから鳴り終るまでの微細....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
ん片手落ちの裁判だけれど、私が因果を含められて、雇を解かれたのさ」 白糸は身に
沁《し》む夜風にわれとわが身を抱《いだ》きて、 「まあ、おきのどくだったねえ」 ....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
く分泌物の中に浮き漂った。軽く開いた唇は熱い息気のためにかさかさに乾いた。油汗の
沁み出た両手は氷のように冷えて、青年を押もどそうにも、迎え抱こうにも、力を失って....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
ッチは忘れた様に船渠の方を見遣って居る。 話柄が途切れて閑とすると、暑さが身に
沁みて、かんかん日のあたる胴の間に、折り重なっていぎたなく寝そべった労働者の鼾が....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、一降り降ったあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に
沁みるほどに薄寒い。…… 木の葉をこぼれる雫も冷い。……糠雨がまだ降っていよう....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
は、血を包んで、羽二重よりも滑である。 湖の色は、あお空と、松山の翠の中に朗に
沁み通った。 もとのように、就中遥に離れた汀について行く船は、二|艘、前後に帆....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
たのと一緒であった。 がたがたと身震いしたが、面は幸に紅潮して、 「ああ、腸へ
沁透る!」 「何かその、何事か存じませぬが、按摩は大丈夫でござります。」と、これ....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
から、掻合わす外套の袖も、妙にばさばさと音がする。外は霜であろう。山の深さも身に
沁みる。夜さえそぞろに更け行くように思われた。 「来ましたよ。」 「二人きりです....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ると、汚い二階家の、上も下も、がらんとして、ジイと、ただ、招魂社辺の蝉の声が遠く
沁込む、明放しの三間ばかり。人影も見えないのは、演義三国誌|常套手段の、城門に敵....
「橋」より 著者:池谷信三郎
メントストオアには、あらゆる生活の断面が、ちょうど束になった葱の切口のように眼に
沁みた。 十本では指の足りない貴婦人が、二人の令嬢の指を借りて、ありったけの所....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
も深刻であったので、この地上の熱や光りではとても温めることも出来ず、また彼の眼に
沁み込んだ、その常闇を払い退けることが出来ないのだと思って、やれやれと溜め息をつ....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
てと、お縫が謂えば、ちらちらと、白菊の花、香の煙。 話が嵩じて理に落ちて、身に
沁みて涙になると、お縫はさすがに心着いて、鮨を驕りましょうといって戸外へ出たのが....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
眼に静かに見渡すあたりは、ひとしきり風も無く、寂として日影が色濃くすべてのものに
沁み入っている。 粂吉は立ち上ってつかつかと岩鼻へ出かけて行く。其処の岩鼻は直....