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「沁みる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沁みるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
しょう》の音を園は好んで聞いた。上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に沁みる音だと思ったり、自分の寺の鐘を撞きながら、鳴り始めてから鳴り終るまでの微細....
箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
うに言った。 腹立ちまぎれに支度さして外記はすぐに駕籠に乗った。寝足らない眼に沁みる朝の空気は無数の針を含んでいるようで、店の前の打ち水も白い氷になっていた。....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
裏四番町の屋敷を出たのは当日の七ツ(午前四時)を少し過ぎた頃で、尖った寒さは眼に沁みるようであった。又蔵は定紋付きの提灯をふり照らして先に立った。三人の草履は暁....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
ば進むほど、きっと行き当る人情の外れに垂れている幕である。冷く素気なく寂しさ身に沁みる幕である。死よりも意識があるだけに、なお寂しい肌触りの幕である。女は、いや....
中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
に、その酒を和子に返した。で、彼は試みに飲んでみると、その味は水のごとくで、歯に沁みるほどに冷たくなっていた。和子は急いで我が家へ帰って、衣類諸道具を売り払って....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
畑を吹いて来るしめった風は、宿の浴衣の上にフランネルをかさねた私の肌に冷やびやと沁みる夕方であった。 寺は安中みちを東に切れた所で、ここら一面の桑畑が寺内まで....
修禅寺物語」より 著者:岡本綺堂
じゃ。蒲殿といい、上様と言い、いかなる因縁かこの修禅寺には、土の底まで源氏の血が沁みるのう。 (寺鐘烈しくきこゆ。春彦夫婦は再び表をうかがい見る。) かえで お....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、一降り降ったあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に沁みるほどに薄寒い。…… 木の葉をこぼれる雫も冷い。……糠雨がまだ降っていよう....
古狢」より 著者:泉鏡花
たし、赤蜻蛉に海の夕霧で、景色もよかったが、もう時節で、しんしんと夜の寒さが身に沁みる。あすこいら一帯に、袖のない夜具だから、四布の綿の厚いのがごつごつ重くって....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
から、掻合わす外套の袖も、妙にばさばさと音がする。外は霜であろう。山の深さも身に沁みる。夜さえそぞろに更け行くように思われた。 「来ましたよ。」 「二人きりです....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
て見た日には、内気な、優しい、上品な、着ものの上から触られても、毒蛇の牙形が膚に沁みる……雪に咲いた、白玉椿のお人柄、耳たぶの赤くなる、もうそれが、砕けるのです....
番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
ような薄寒い風にふるえる花びらが音もなしに落ちた。その冷たい花の匂いがお菊の身に沁みると、彼女はまたおのずと涙ぐまれた。 その眼をそっと拭きながら、翻える花の....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
ばと見ゆるまで、日に輝きつつも、何となく旅情を催させて、故郷なれば可懐しさも身に沁みる。 峰の松風が遠く静に聞えた。 庫裡に音信れて、お墓経をと頼むと、気軽....
磯部の若葉」より 著者:岡本綺堂
た日で、桑畑を吹て来る湿った風は、宿の浴衣の上にフランネルを襲ねた私の肌に冷々と沁みる夕方であった。 寺は安中路を東に切れた所で、ここら一面の桑畑が寺内までよ....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
ああ、にっぽんの秋のくれがた 冷い雨が降っていますよ つわぶきの黄いろい花が眼に沁みる 厳父、慈母と言って、父親は厳格、母親は慈しみ深いのが特色のように極めら....