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沁み入る
「沁み入る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沁み入るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「一兵卒」より 著者:田山花袋
、「あ、蟋蟀が鳴いている……」とかれは思った。その哀切な虫の調べがなんだか全身に
沁み入るように覚えた。 疼痛、疼痛、かれはさらに輾転反側した。 「苦しい! ....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
へ打ちまけたが、またおびただしい。青い火さきが、堅炭を搦んで、真赤に※って、窓に
沁み入る山颪はさっと冴える。三階にこの火の勢いは、大地震のあとでは、ちと申すのも....
「雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
きしくなるのだった。
闇太郎|懺悔《ざんげ》
一
冷え冷えと、胸の底に
沁み入るような、晩秋の夜風が、しゅうしゅうと吹き抜いている、夜更けの町を、吉原|....
「ドグラ・マグラ」より 著者:夢野久作
しながら、一町ばかり遠ざかったようであったが、やがて又方向を換えて、私の耳の穴に
沁み入るほどの高い悲鳴を揚げつつ、急速度で迫り近付いて来たと思うと、間もなくピッ....
「戦場」より 著者:夢野久作
らしかった。 「……ありがとう……御座います。クラデル様……」 候補生が大地に
沁み入るような暗い、低い、痛々しい声で云った。白い水蒸気の息をホ――ッと月の光り....
「罌粟の中」より 著者:横光利一
だった。それも招きに応じて来たものならまだしも、振り向きもせぬ寂しさを味うのは、
沁み入る異境の果ての心細さに変るのだった。梶は今日はたびたびの不覚だったと思い、....
「死後の恋」より 著者:夢野久作
くなって、枯れ葉と、枯れ枝ばかりの平地になりました。それにつれて身体中の毛穴から
沁み入るような冷たさ、気味わるさが一層深まって来るようで、その枯れ葉や枯れ枝が、....
「死者の書」より 著者:折口信夫
郎女の声・詞を聞かぬ日はない身狭乳母ではあった。だがついしか此ほどに、頭の髄まで
沁み入るような、さえざえとした語を聞いたことのない、乳母だった。 寺方の言い分に....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
句ある歌もあって参考とすべきである。いずれにしても此歌は、景を叙しつつ人間の心に
沁み入るものを持って居る。此御歌に対して、春日王は、「大君は千歳にまさむ白雲も三....
「方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
(末起がくる、末起を抱いて、あたらしい生活がはじまる……) 方子は、夢心地で
沁み入るような幸福感に陽炎を追い、飛ぶ列車を想像していた。三人の生活――お祖母さ....
「瀞」より 著者:佐藤垢石
と思う。 瀞八丁の両岸の崖に、初夏の微風を喜びあふれる北山川の若葉も、我が眼に
沁み入るばかりの彩であった。それが、鏡のように澄んで静かに明るい淵の面に、ひらひ....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
った。二葉亭は毎晩その刻限を覘っては垣根越しに聞きに行った。艶ッぽい節廻しの身に
沁み入るようなのに聞惚れて、為永の中本に出て来そうな仇な中年増を想像しては能く噂....
「樹氷」より 著者:三好十郎
もいいから、もうのんびり構えて――いい歌だなあ! 春子 (涙声)ほんと! まるで
沁み入るようだわ。 その間も継続していた「北大寮歌」が大きくなり急速に近づき、....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
。ただ夏草だけが、人の胸のあたりまでも茂って、松の梢を鳴らしてゆく風の音が、魂に
沁み入るような気持です。 が、目前に迫った彼女たちとの再会に胸を躍らせて、別段....
「絶望より生ずる文芸」より 著者:小川未明
あると思う。此の色彩的な、音楽的な世界に立って楽しむという心、そこにも我等の胸に
沁み入る誠実と淋しき喜悦とがある。又或るものは洗礼を受くべき暗黒轟々として刻々に....