沁み渡る[語句情報] » 沁み渡る

「沁み渡る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沁み渡るの前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
気が気でなかった。こうして暖かい蒲団の上に坐っていても、彼の胸には冬の夜の寒さが沁み渡るようにも思われた。しかもその「馬鹿らしい」ことを言った祟《たた》りで、彼....
眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
所の、あの音でございます。」 「ちょっと、あの水口を留めて来ないか、身体の筋々へ沁み渡るようだ。」 「御同然でございまして……ええ、しかし、どうも。」 「一人じ....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
は横になり体を楽にするとピストルの薄荷がこんこん匂った。こんこん匂う薄荷が眼鼻に沁み渡ると小初は静かにもう泣いていた。思えば都会|偏愛のあわれな父娘だ。それがた....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
間なく空間へただ徒らに燃え費されて行くように感じられた。愛惜の気持ちが復一の胸に沁み渡ると、散りかかって来る花びらをせき留めるような余儀ない焦立ちと労りで真佐子....
正義と微笑」より 著者:太宰治
が一段一段と行き渡る。 日が出た。惜しい事には己はすぐ羞明しがって 背を向ける。沁み渡る目の痛を覚えて。 あこがれる志が、信頼して、努力して、 最高の願の所へ到....
ドグラ・マグラ」より 著者:夢野久作
るよ。そのうち正気に帰るにしても。そこでこの世の悲しさ辛らさが。遣瀬ないほど身に沁み渡る。又は吾身の姿に恥じて。残る家族のためぞと思い。人を諦らめ世を諦らめて。....
戦場」より 著者:夢野久作
の闇黒の底に消え込んで行く凄愴とも、壮烈とも形容の出来ない光景を振り返って、身に沁み渡る寒気と一緒に戦慄し、茫然自失しているばかりであった。天幕の中に帰って制服....
楢重雑筆」より 著者:小出楢重
ず、私は丹田に力を込めて目をつぶって揉んでもらいましたが、彼女の毒気が肩先きから沁み渡るのを覚えました。 それから婆さんは、毎夜私の部屋へ遊びに来まして毒気を....
風博士」より 著者:坂口安吾
掛椅子から移転したばかりに相違ない証拠には、一陣の突風が東北から西南にかけて目に沁み渡る多くの矢を描きながら走っていたのである。 「先生約束の時間がすぎました」....
駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
らともなく身に迫って鼻を撲ったと思うと、ぞっとするように物寂しい夜気が骨にまでも沁み渡る。 何だろう、何の臭気だろう。 おお、私はいつの間にか桐ヶ谷の火葬場....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
が一段一段と行き渡る。 日が出た。惜しい事には己はすぐ羞明しがって 背を向ける。沁み渡る目の痛を覚えて。 あこがれる志が、信頼して、努力して、 最高の願の所へ....