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「沁み込む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沁み込むの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
坑夫」より 著者:夏目漱石
なった。じっとして立っていた。カンテラのじいと鳴るのも、足の底へ清水《しみず》が沁み込むのも、全く気がつかなかった。したがって何分《なんぷん》過《た》ったのかと....
眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
なる、蝋燭が、またぽうと明くなる。影が痣になって、巴が一つ片頬に映るように陰気に沁み込む、と思うと、ばちゃり……内端に湯が動いた。何の隙間からか、ぷんと梅の香を....
」より 著者:徳田秋声
らしなく取り乱らかされたものを整理したり、手紙を選り分けたりした。赭ちゃけた畳に沁み込むような朝日が窓から差し込んで、鬢の毛にかかる埃が目に見えるほど、冬の空気....
一足お先に」より 著者:夢野久作
辷り込んで、コトリとも云わせずに扉を閉め切る事が出来た。 向うの窓の磨硝子から沁み込む、月の光りに照らし出されたタタキの上は、大地と同様にシットリとして冷めた....
旅愁」より 著者:横光利一
身体は縮まったが、人一人も見えぬ彫りの深い夜の街に雨の降り込む美しさは、鬼気身に沁み込む凄絶な趣きだった。 矢代は、暫くしてノックの音が聞えたのでドアの鍵を廻....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
も私は死にたくない。かかる生が続けば続くほど、ますます運命を開拓して心の隈々まで沁み込むような生が得たい。私はあくまで生きたい。しかし恐ろしい力を持つ自然は倨然....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
心な客人によって、汚されはしまいかとびくびくものでいた。雲林は人間の臭みが自然に沁み込むのをおそれて、自分の描く山水の画幅には、どんなことがあっても、人物を描き....
楢重雑筆」より 著者:小出楢重
夜店の闇に響く艶歌師のヴァイオリンといった種類のもので、下等ではあるが、妙に心に沁み込む処のものでした。 勿論安い事は驚くべきものでした、家へ持って帰って眺め....
世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
とくに地球を抱き締めているのである。 その暗黒がすべての物体、鉄や石の中までも沁み込むと、すべての物体の分子は互いの連絡がゆるんで来て、遂には離れ離れになる。....
曼珠沙華」より 著者:斎藤茂吉
ているのは、寧ろ異国的であると謂うことも出来る。秋の彼岸に近づくと、日の光が地に沁み込むように寂かになって来る。この花はそのころに一番美しい。彼岸花という名のあ....
古寺巡礼」より 著者:和辻哲郎
ある。一度にはせいぜい二体か三体ぐらい、それも静かに落ちついた心持ちで、胸の奥に沁み込むまでながめたい。 N君はそれをやっているらしい。入り口でパッタリ逢った....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
わたし胸の底までせいせいしますわ。 やや年長けたる貴夫人 本当ね。胸に沁み込むようね。あの人の ※ですわ。 最も年長けたる貴夫人 あれ....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
ている。葉の裏からは鮮かな緑が黄金色に溶けて、私達の体にも真白な砂地にも音もなく沁み込む。この大虎杖の叢は北アルプス北部の渓間に特有の景象で、南アルプスの渓を埋....