沈湎[語句情報] » 沈湎

「沈湎〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沈湎の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
まがはら》の国も忘れて、洞穴を罩《こ》めた脂粉《しふん》の気の中《なか》に、全く沈湎《ちんめん》しているようであった。ただその大騒ぎの最中《もなか》にも、あの猿....
蠱惑」より 著者:豊島与志雄
うすることも出来ないんだ。私のまわりには彼の影が深く立ち罩めている。私はその中に沈湎してもがき乍ら、只じっと堅く堅く息つまるように心の扉を閉すの外はなかった。 ....
囚われ」より 著者:豊島与志雄
を呪った。呪いながらも彼はいつしか富子の姿を眼の前に想い浮べていた。そしてそれに沈湎してゆくと共にある重苦しい恐怖を感じた。底知れぬ悩ましい淵を覗いたような気が....
生あらば」より 著者:豊島与志雄
がなくて或る誘惑があった。壮助は少し左に傾けた首を堅く保ちながら、その光景の中に沈湎していった。 梯子段に老婆の足音が聞えた時、壮助ははっとして我に返った。自....
或る男の手記」より 著者:豊島与志雄
離すことがなかった。酒と煙草とは精神の一種の手淫である。その不自然な精神的淫蕩に沈湎してるうちに、私の脳力も体力も衰えてきて、その直接の現われとしては、前に述べ....
立枯れ」より 著者:豊島与志雄
たが、そうした自己弁義のための反省は、彼を推進させる力とはならずに、現在の気分に沈湎させる用をしかなさなかった。そういう傾向が近頃では更にひどくなっていた。今も....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
を見る人のように、恍惚《こうこつ》と内心の光燿《こうよう》との無言の逸楽のうちに沈湎《ちんめん》していた。彼は生活の方式をこう定めた。無形の仕事にでき得る限り多....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
に面してさえおれば、彼らはほほえむ。かつて愉快を知らないが、常に恍惚としている。沈湎《ちんめん》することがその生命である。人類の歴史も彼らにとっては、ただの一|....
古木」より 著者:豊島与志雄
していましたが、椎の木の伐採を頼む自分の言葉が、胸にひしと反響する心地で、それに沈湎してゆきました。 付添いの看護婦に促されて、巳之助は我に返り、床に就きまし....
自由人」より 著者:豊島与志雄
いのだ。彼はそれをだいたい実行した。そして眠ったり覚めたりしながら深い瞑想の中に沈湎した――その時の彼の思念を、次に聞こう。 七 俺の心の底に憂鬱や寂寥が濃く....
母の上京」より 著者:坂口安吾
が女王で有り得る厳たる事実を認めざるを得なかつた。夏川は今もなほ自ら淪落の沼底に沈湎するが故に自らのゐる場所を青春と信じてゐた。青春とは遊ぶことだと思つてゐたの....
鴉片を喫む美少年」より 著者:国枝史郎
同じ鴉片窟で逢った。 宋思芳はだんだん鴉片を煉るに慣れ、追々鴉片の醍醐の味に、沈湎するように思われた。 僕はしばしば宋思芳に向かって、どういう素性の人間なの....
現代美学の危機と映画理論」より 著者:中井正一
ミルが指摘するように、現代様式の社会機構ははるかに個人をおしつぶす機械文明の底に沈湎していった。一九一八―一九三〇年をクレミュウは個人的主観的諸価値に集団的客観....
翻訳遅疑の説」より 著者:神西清
。要するに言語としての包摂力が乏しいということである。もちろん創作家が身辺雑記に沈湎《ちんめん》し、或いは概念を伝達すればこと足る底のイズム小説に終始し、或いは....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
はとても生活する能力はないものと断念め、生中天分の乏しいのを知りつつも文学三昧に沈湎するは文学を冒涜する罪悪であると思詰め、何とかして他に生活の道を求めて学問才....