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「沈滞〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沈滞の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
に、葉子の心は無理無体な努力で時々驚いたように乱れさわぎながら、たちまち物すごい沈滞の淵《ふち》深く落ちて行くのだった。葉子の意志はいかに手を延ばしても、もう心....
二つの道」より 著者:有島武郎
れて、感激の涙が涙堂に溢れてくる。 いわゆる中庸という迷信に付随しているような沈滞は、このごとき人の行く手にはさらに起こらない。その人が死んで倒れるまで、その....
星座」より 著者:有島武郎
れは漫罵《まんば》だ。貴様はいったい何を提唱した。つまりくだらないから俺はこんな沈滞した小っぽけな田舎にはいないと言うただけじゃないか。なるほど貴様は社会主義労....
本州横断 癇癪徒歩旅行」より 著者:押川春浪
無い事でもない、狭軌鉄道が広軌鉄道にならぬ事でもない、実に国人《こくじん》意気の沈滞と民心の腐敗とである。民心の腐敗その極に至れば、国家は遂に見苦しく自滅する他....
第五氷河期」より 著者:海野十三
中して、ついに第五氷河期は来たのであった。火山からのおびただしい噴出物は、高空に沈滞し太陽熱をすっかり遮断してしまったのである。そしてこの恐るべき第五氷河期がつ....
動かぬ鯨群」より 著者:大阪圭吉
て一緒に逃げてくれと云う。驚きと喜びと、不安の一度に押寄せた思いで、たった今まで沈滞した諦めの中に暮していた女は、激しい動揺とためらいに突落されたのだった。 ....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
二時の太陽は静に大東京の隅々までを照していた。松飾などは夙に取退けられて、人々は沈滞した二月を遊び疲れた後の重い心で懶げに迎えようとしていたが、それでも未だ都大....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
のの滅却であるからである。これじつに空疎なる主観と貧弱なる周囲とがもたらす生命の沈滞荒廃よりもわれらにとっていっそう切実なる害悪であり、苦悩である。 このゆえ....
世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
盛装した墓衣を着て、死人のような紫色の顔をして、かつて見たこともないほどに恐怖の沈滞しているような冷やかな眼をしたラザルスの姿が、物凄い光りのなかに朦朧として浮....
幾度目かの最期」より 著者:久坂葉子
たことなんです。その軽々しくなった頭髪の感じ。だけど、私は、心の中にいやなものが沈滞してました。ますます自分をみにくくし、ますます自分をきらい、ますます自分をみ....
なよたけ」より 著者:加藤道夫
る)……坐れよ! 清原 (渋々と彼の隣に坐る) 長い、気まずい沈黙。 文麻呂 (沈滞した空気を振払うように)ああ、何と云う静けさだろう。………ねえ、清原。ほら。....
淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
である。 椿岳の画の豪放|洒脱にして伝統の画法を無視した偶像破壊は明治の初期の沈滞|萎靡した画界の珍とする処だが、更にこの畸才を産んだ時代に遡って椿岳の一家及....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
に生れ、両統合体の成ったのは十二歳の年、二十歳頃はすでに京に出ていた。当時は歌壇沈滞のときで、耕雲や飛鳥井雅縁(宋雅)がいる位、若い冷泉為尹を推して、そろそろ今....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
時、その時の心に注意して、心があまり軽からんとすればこれを制禦し、心があまり重く沈滞せんとする時はこれを促進させるよう努めなくてはなりません。仏教でこれを言い現....
黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
先を急ぐ必要があるので、惜しくも夫を見捨てて右の本谷に入った。朗かな駒鳥の鳴声が沈滞した谷の空気を振わして、爽快な音波を鼓膜に伝える。夫に和して大瑠璃の囀りが近....