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「沈静〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沈静の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
武蔵野」より 著者:国木田独歩
《はだか》になって、蒼《あお》ずんだ冬の空が高くこの上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈静に入る。空気がいちだん澄みわたる。遠い物音が鮮かに聞こえる。自分は十月二十六....
「いき」の構造」より 著者:九鬼周造
の「いき」を支配している。温色の興奮を味わい尽した魂が補色残像として冷色のうちに沈静を汲むのである。また、「いき」は色気のうちに色盲《しきもう》の灰色を蔵してい....
旧主人」より 著者:島崎藤村
さと御帰りよ」 「水を、も一つ上げましょう」 「沢山、もう頂きました」 「すこし沈静《おちつ》いたら、今夜は早く御帰りなさい。お定もああして心配していますから、....
クララの出家」より 著者:有島武郎
ラの魂だけが唯一つ感激に震えて燃えていた。死を宣告される前のような、奇怪な不安と沈静とが交る交る襲って来た。不安が沈静に代る度にクララの眼には涙が湧き上った。ク....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
いう洋髪の鬢と髱の間へ突込んで、ごしごし掻きながら、しとやかな夫人を取り戻す心の沈静に努める様子だったが、額の小鬢には疳の筋がぴくりぴくり動いた。小鼻の皮肉な皺....
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
は反って暖かだ。夜に入って雪の降る日なぞは、雨夜のさびしさとは、違って、また別の沈静な趣がある。どうかすると、梅も咲くかと疑われる程、暖かな雪の夜を送ることがあ....
」より 著者:島崎藤村
調子じゃ困ったもんだなんて、豊世と二人で話しましたが、昨日あたりから大分それでも沈静いて来ました――」 簡単に母の様子を知らせて置いて、正太は出て行った。 ....
木の子説法」より 著者:泉鏡花
に遣る、この早業は、しかしながら、礼拝と、愛撫と、謙譲と、しかも自恃をかね、色を沈静にし、目を清澄にして、胸に、一種深き人格を秘したる、珠玉を偲ばせる表顕であっ....
転機」より 著者:伊藤野枝
らか余裕のある心持ちで考えてみようとする落ち付きを持つことができた。けれど、その沈静は、私の望むような、批判的な考えの方には導かないで、何となく物悲しい寂しさを....
河霧」より 著者:国木田独歩
の方はその反対で、いたるところ、古い都の断礎のような者があって一種言うべからざる沈静の気がすみずみまで行き渡っている。 豊吉はしばらく杉の杜の陰で休んでいたが....
我が人生観」より 著者:坂口安吾
ってとびだそうとしている。彼が大きな抵抗力を持っていれば、ついに噴火に至らずに、沈静する時期がくるかも知れない。そして彼は健全で道徳的な模範的人間として人々に賞....
レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
ました。――先刻までの物凄まじき喧騒の後が、氷のような底冷たい、神秘がかったこの沈静でござります。(間)人々は四方を見廻し、また自分の影を見詰め、そして物音を聞....
五重塔」より 著者:幸田露伴
っしゃるは知れたこと、さあ此衣を着て家に引っ籠み、せめて疵口のすっかり密着くまで沈静いていて下され、とひたすらとどめ宥め慰め、脱ぎしをとってまた被すれば、よけい....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
|黄色光に変じ、黄色光から、宏壮な機関室に入って、やや本然の木地の明りにその色は沈静して、しかして、コトリコトリと首をもたげて来る。その一列の丸太を載せて、流れ....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
は草の緑が若若しい。雪渓の勾配はさして急ではなかった。両側の山で駒鳥が盛に鳴く、沈静な谷の空気が諧調の音波を無限に拡げる。それには耳も借さない風情で雪に慣れた南....