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沓
「沓〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沓の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「浅草公園」より 著者:芥川竜之介
吊《つ》った、火のともらない大提灯《おおじょうちん》。提灯は次第に上へあがり、雑
沓《ざっとう》した仲店《なかみせ》を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消....
「尾生の信」より 著者:芥川竜之介
耳を傾けた。
橋の上にはしばらくの間、行人《こうじん》の跡を絶ったのであろう。
沓《くつ》の音も、蹄《ひづめ》の音も、あるいはまた車の音も、そこからはもう聞えて....
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
、戟《ほこ》を持つもの、皆それぞれ、得物《えもの》に身を固めて、脛布《はばき》藁
沓《わろうず》の装いもかいがいしく、門の前に渡した石橋へ、むらむらと集まって、列....
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
に家の方へ曲って行った。
六
うちへ帰ってみると、うす暗い玄関の
沓脱《くつぬ》ぎの上に、見慣れたばら緒の雪駄《せった》が一足のっている。馬琴はそ....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
ま》の上へ靴の片足を踏みかけたのと、向うの俥が桐油《とうゆ》を下して、中の一人が
沓脱《くつぬ》ぎへ勢いよく飛んで下りたのとが、ほとんど同時だったのです。私はその....
「葱」より 著者:芥川竜之介
造《こうしどづくり》の家が浮んでいた。軒に松《まつ》の家《や》と云う電燈の出た、
沓脱《くつぬ》ぎの石が濡れている、安普請《やすぶしん》らしい二階家である、が、こ....
「路上」より 著者:芥川竜之介
なまよい》の大井《おおい》を連れてこの四つ辻を向うへ突切るには、そう云う周囲の雑
沓《ざっとう》と、険呑《けんのん》な相手の足元とへ、同時に気を配らなければならな....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
はあの牛飼の若者が、土器《かわらけ》にともした油火《あぶらび》の下に、夜なべの藁
沓《わらぐつ》を造っていた。彼は戸口に思いがけない人のけはいが聞えた時、一瞬間|....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、小刻みに縁を走って、片足ずつ駒下駄を、嘴でコトンと壇の上に揃えたが、鴉がなった
沓かも知れない、同時に真黒な羽が消えたのであるから。 足が浮いて、ちらちらと高....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
角から、突当りのはばかりへ、廻縁になっています。ぐるりとその両側、雨戸を開けて、
沓脱のまわり、縁の下を覗いて、念のため引返して、また便所の中まで探したが、光るも....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ふらふらしてるよ。」 背中にひったり、うしろ姿でお京が立ったのを、弱った糸七は
沓脱がないから、拭いた足を、成程釣られながら、密と振向いて見ると、愁を瞼に含めて....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
涙ぐましい犠牲の生活は、実にその時を境界として始められたのでした。或る年の冬は雪
沓を穿いて、吉備国から出雲国への、国境の険路を踏み越える。又或る年の夏には焼くよ....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
ち佗びるように、日曜が来るのを首をながくして待った。その日は、教会が絶えず人で雑
沓するからである。 教会のなかがじめじめしているために、体がいよいよ弱くなって....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
て、垣の破目をするりと抜けると、出た処の狭い路は、飛々の草鞋のあと、まばらの馬の
沓の形を、そのまま印して、乱れた亀甲形に白く乾いた。それにも、人の往来の疎なのが....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
る。上包して一束、色紙、短冊。……俳句、歌よりも、一体、何と言いますか、冠づけ、
沓づけ、狂歌のようなのが多い、その中に――(能登路の記)――があったのです。大分....