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沫
「沫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
には白椿《しろつばき》が、まだ疎《まばら》に咲き残って、絶えず湧きこぼれる水の水
沫《しぶき》は、その花と葉とを洩《も》れる日の光に、かすかな虹《にじ》を描いてい....
「海のほとり」より 著者:芥川竜之介
。しかし海だけは見渡す限り、はるかに弧《こ》を描《えが》いた浪打ち際に一すじの水
沫《みなわ》を残したまま、一面に黒ぐろと暮れかかっていた。
「じや失敬。」
「さ....
「或る女」より 著者:有島武郎
それらの外国人の中には田川夫人もまじっていた。
検疫官は絵島丸が残して行った白
沫《はくまつ》の中で、腰をふらつかせながら、笑い興ずる群集にまで幾度も頭を下げた....
「或る女」より 著者:有島武郎
いそ》に波また波が千変万化して追いかぶさって来ては激しく打ちくだけて、まっ白な飛
沫《ひまつ》を空高く突き上げるように、これといって取り留めのない執着や、憤りや、....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
雪の中に薄れて行って、やがてはかき消すように見えなくなってしまった。 怒濤。白
沫。さっさっと降りしきる雪。目をかすめて飛びかわす雲の霧。自然の大叫喚‥‥そのま....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
陣羽織が流れるやら。大小をさしたものが、ちっとは雨にも濡れたが可い。慌てる紋は泡
沫のよう。野袴の裾を端折って、灸のあとを出すのがある。おお、おかしい。(微笑む)....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
きゅうと息を引き、馬蛤の穴を刎飛んで、田打蟹が、ぼろぼろ打つでしゅ、泡ほどの砂の
沫を被って転がって遁げる時、口惜しさに、奴の穿いた、奢った長靴、丹精に磨いた自慢....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
士の方をだな、――無い御縁が凄じいや、てめえが勝手に人の縁を、頤にしゃぼん玉の泡
沫を塗って、鼻の下を伸ばしながら横撫でに粧やあがる西洋|剃刀で切ったんじゃないか....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
へついて廻廊の欄干を三階のように見ながら、廂の頼母しさを親船の舳のように仰いで、
沫を避けつつ、吻と息。 濡れた帽子を階段|擬宝珠に預けて、瀬多の橋に夕暮れた一....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
旗のごとく、剣のごとく聳えたのは、巨船天を摩す柱に似て、屋根の浪の風なきに、泡の
沫か、白い小菊が、ちらちらと日に輝く。白金の草は深けれども、君が住居と思えばよし....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
に逆って揉むせいで。 あせって銑さんのおした船が、がッきと当って杭に支えた。泡
沫が飛んで、傾いた舷へ、ぞろりとかかって、さらさらと乱れたのは、一束の女の黒髪、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
来て、ちょろちょろと搦みつくと、袖が板のように重くなって、塵塚に、ばしゃばしゃと
沫が掛る、雫が落ちる。 地鳴が轟として、ぱっと一条の焔を吐くと、峰の松が、颯と....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
西北の空からどっと吹き寄せる疾風、見る見る船はグルリと向きをかえ、人々は滝なす飛
沫を一ぱいに浴びました。それにあの時の空模様の怪しさ、赭黒い雲の峰が、右からも左....
「雪霊続記」より 著者:泉鏡花
と巻いて、捲きながら乱るると見れば、計知られぬ高さから颯と大滝を揺落すように、泡
沫とも、しぶきとも、粉とも、灰とも、針とも分かず、降埋める。 「あっ。」 私は....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
た。――(前刻友だちと浜へ出て見た、そういえば、沖合一里ばかりの処に、黒い波に泡
沫を立てて、鮫が腹を赤く出していた、小さな汽船がそれなんです。)――日暮方の出帆....