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「油煙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

油煙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
な油壷の中の石油はまったく尽きはてて、灯は芯《しん》だけが含んでいる油で、盛んな油煙を吐きだしながら、真黄色になってともっていた。芯の先には大きな丁子《ちょうじ....
武蔵野」より 著者:国木田独歩
《かし》の梢まで昇ると、向う片側の家根が白《し》ろんできた。 かんてらから黒い油煙《ゆえん》が立っている、その間を村の者町の者十数人駈け廻わってわめいている。....
婦系図」より 著者:泉鏡花
か、人足もややこの辺に疎になって、薬師の御堂の境内のみ、その中空も汗するばかり、油煙が低く、露店の大傘を圧している。 会釈をしてわずかに擡げた、主税の顔を、そ....
思い出の記」より 著者:小泉節子
無頓着で感じない時があるのです。 ある夜十一時頃に、階段の戸を開けると、ひどい油煙の臭が致します。驚いてふすまを開けますと、ランプの心が多く出て居て、ぽっぽっ....
蟹工船」より 著者:小林多喜二
なヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が....
大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
く夜店は夏は夏で西瓜と飴湯に暑さを忘れ、冬は冷たい風を衿まきで防ぎつつカンテラの油煙を慕って人々は流れて行く。ことに年末の松竹梅と三宝荒神様のための玉の灯明台、....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
に、溝板から直ぐに竹の欄干になって、毛氈の端は刎上り、畳に赤い島が出来て、洋燈は油煙に燻ったが、真白に塗った姉さんが一人居る、空気銃、吹矢の店へ、ひょろりとして....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
つ、ぼうと赤く、宙に浮いたきりで何も分らぬ。釣ランプだが、火屋も笠も、煤と一所に油煙で黒くなって正体が分らないのであった。 が凝視める瞳で、やっと少しずつ、四....
露肆」より 著者:泉鏡花
せんのが、壺の、この、」 と目通りで、真鍮の壺をコツコツと叩く指が、掌掛けて、油煙で真黒。 頭髪を長くして、きちんと分けて、額にふらふらと捌いた、女難なきに....
黒百合」より 著者:泉鏡花
榎の下に居るのを怪しまぬけれども、今夜のはそれではない。 今灯を点けたばかり、油煙も揚らず、かんてらの火も新しい、店の茣蓙の端に、汚れた風呂敷を敷いて坐り込ん....
鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
というのです。 薬師様が近くなると、ぞろぞろと人が続いて、あたりにはカンテラの油煙が立昇ります。雨も降らないのに、恐ろしく大きな傘を拡げて、その下で飴屋さんが....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
れませんよ。 いえね、狐火でも欲しいほど、洋燈がしょんぼり点いたばかり、それも油煙に燻って、近常さんの内はまた真暗になりました。……お正月がそれなんですもの。....
世間師」より 著者:小栗風葉
っている。窓は閉めて、空気の通う所といっては階子の上り口のみであるから、ランプの油煙や、人の匂や、変に生暖い悪臭い蒸れた気がムーッと来る。薄暗い二間には、襤褸布....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
。その後葛飾でも初めはそうだったし、小田原へ移ってからも、二、三年は煤けランプの油煙くさい臭気をいつでも徹夜の暁には嗅がされた。それに電話は身ぶるいするほど嫌い....
新古細句銀座通」より 著者:岸田劉生
は植木もさる事ながらあの赤や白色とり/″\に美しいほおずき屋の店はカンテラの光や油煙とともに誠に旧日本の美の尤なる一つであるといってもまあそう過言でもあるまい。....