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沾
「沾〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沾の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「伝吉の敵打ち」より 著者:芥川竜之介
がったなり、いつまでも一人じっとしていたが、涙は不思議にも全然|睫毛《まつげ》を
沾《うるお》さなかった。その代りにある感情の火のように心を焦《こ》がすのを感じた....
「母」より 著者:芥川竜之介
気の毒そうにつけ加えた。
「御宅ではとんだ事でございましたってねえ。」
敏子は
沾《うる》んだ眼の中に、無理な微笑を漂わせた。
「ええ、肺炎《はいえん》になりま....
「一夕話」より 著者:芥川竜之介
ん》の外《そと》の見物の間に、芸者らしい女が交《まじ》っている。色の蒼白い、目の
沾《うる》んだ、どこか妙な憂鬱な、――」
「それだけわかっていれば大丈夫だ。目が....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
なごころ》に母の手を抑えた。母の手は冷たい脂汗《あぶらあせ》に、気味悪くじっとり
沾《しめ》っていた。
母は彼の顔を見ると、頷《うなず》くような眼を見せたが、す....
「西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
には、注意しない。折からウェエタアが持って来たウイスキイで、ちょいと喉《のど》を
沾《うるお》すと、ポケットから瀬戸物のパイプを出して、それへ煙草をつめながら、
....
「三右衛門の罪」より 著者:芥川竜之介
のし》りけるが、たちまち御前《ごぜん》なりしに心づき、冷汗《れいかん》背《せ》を
沾《うるお》すと共に、蹲踞《そんきょ》してお手打ちを待ち居りしに、上様には大きに....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
へ歩み寄って、大きな掌《たなごころ》へ掬《すく》った水に、二口三口|喉《のど》を
沾《うるお》した。沽しながら彼女の眼つきや唇の微笑を思い浮べて、何か嬉しいような....
「馬の脚」より 著者:芥川竜之介
確実な報道ではなかったらしい。現にまた同じ新聞の記者はやはり午後八時前後、黄塵を
沾《うるお》した雨の中に帽子をかぶらぬ男が一人、石人石馬《せきじんせきば》の列を....
「犬」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
ことを思い出した。 クサカは別荘の人々の後について停車場まで行って、ぐっしょり
沾れて別荘の処に帰って来た。その時クサカは前と変った芸当を一つしたが、それは誰も....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
いたものであろう。 ○ あしひきの山の雫に妹待つとわれ立ち
沾れぬ山の雫に 〔巻二・一〇七〕 大津皇子 大津皇子が石川郎女(伝未詳)に贈っ....
「東上記」より 著者:寺田寅彦
分き難くなれば甲板に長居は船暈の元と窮屈なる船室に這い込み用意の葡萄酒一杯に喉を
沾して革鞄枕に横になれば甲板にまたもや汽笛の音。船は早や港を出るよと思えど窓外を....
「二つの途」より 著者:豊島与志雄
ら飛び下りて、其処に立ち悚んでしまった。 沈黙が続いた。木下はいつのまにか眼を
沾ましていた。彼は俄に我に返ったように、つと手を伸して信子の手を執った。それを堅....
「瘠我慢の説」より 著者:木村芥舟
ばとて、即時、价を馳せて贈られたるなど、余は感泣措くこと能わず、涕涙しばしば被を
沾したり。また先生の教に従いて赤十字社病院に入たる後も、先生|来問ありて識るとこ....
「古事記」より 著者:太安万侶
ねになるには、「わたしは不思議な夢を見た。サホの方から俄雨が降つて來て、急に顏を
沾《ぬ》らした。また錦色《にしきいろ》の小蛇がわたしの頸《くび》に纏《まと》いつ....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
」 と云いながら笛を取り出し構えましたが、小左衞門は松の根方へ足を掛け、歌口を
沾して吹き出しましたが、その音色は尺八よりは一|際静かで、殊に名人の吹くこと故に....