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泥海
「泥海〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
泥海の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「人間失格」より 著者:太宰治
うと思い、リュックサックを背負って船橋市へ出かけて行ったのである。 船橋市は、
泥海に臨んだかなり大きいまちであった。新住民たるその友人の家は、その土地の人に所....
「高野聖」より 著者:泉鏡花
日目の真夜中から大風が吹出してその風の勢ここが峠《とうげ》というところでたちまち
泥海《どろうみ》。
この洪水《こうずい》で生残ったのは、不思議にも娘と小児《こ....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
ては落度になる。向うで滑《すべ》って転ぶのをおとなしく待っている。ただ滑るような
泥海《ぬかるみ》を知らぬ間《ま》に用意するばかりである。 「その結婚の事を朝暮《....
「河口湖」より 著者:伊藤左千夫
ます。五十日のあいだというもの夜とも昼ともあなたわかんねいくらいで、もうこの世が
泥海になるのだって、みんな死ぬ覚悟でいましたところ、五十日めごろから出鳴りがしず....
「苦しく美しき夏」より 著者:原民喜
の歓《よろこ》びに浸らせようとするのだった。彼等が移って来たその土地は茫漠とした
泥海と田野につつまれていて、何の拠《よ》りどころも感じられなかったし、一歩でも閾....
「冬日記」より 著者:原民喜
れないと、妄想《もうそう》は更に飛躍して行った。もの音の杜絶《とぜつ》した夜半、
泥海と茫漠《ぼうばく》たる野づらの涯《はて》しなくつづくそこの土地の妖《あや》し....
「美しき死の岸に」より 著者:原民喜
そうな冷え冷えしたものが朝から空気のなかに顫《ふる》えていた。電車の窓から見える
泥海や野づらの調子が、ふと彼に昨年の秋を回想させるのだった。……一年前の秋、彼と....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
……無法な事を仕出して、諸君が萩原夫婦を追うて、鐘を撞く約束を怠って、万一、地が
泥海になったらどうする! 六ヶ村八千と言わるるか、その多くの生命は、諸君が自ら失....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
所在地まで徒歩するのが習であったが、五日も七日もこう降り続くと、どこの道もまるで
泥海のようであるから、勤人が大路の往還の、茶なり黒なり背広で靴は、まったく大袈裟....
「「草野心平詩集」解説」より 著者:豊島与志雄
カローラ海溝の底にもぐってまで歌う。 雨雲の垂れた寒い日、知らず識らず、浦安の
泥海のほとりまで行って、心平さんは甞て叫んだ、「実際汝、アルノミ、海、」と。然し....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
。そら、ちょうど見てみたまえ。雪が降ってから三日になる。雪は街路を埋め、パリーを
泥海《どろうみ》にしている。が君たちは何をしてるのか。君たちを泥水の中に放ってお....
「初雪」より 著者:秋田滋
レートのうえに降りつづけた。道という道は泥河のようになってしまい、野はいちめんの
泥海と化した。聞えるのは、ただどうどうと落ちる雨の音ばかり。眼に見えるものと云っ....
「田舎医師の子」より 著者:相馬泰三
ちに悪を圧し、悪と戦わねばならぬような善なら、そんな善なら俺は賛成できない。……
泥海の底で、真珠が自分の光を放っていたってそれでもいい訳ではないか。」こう思うの....
「葛飾土産」より 著者:永井荷風
、目を遮るものは空のはずれを行く雲より外には何物もない。卑湿の地もほどなく尽きて
泥海になるらしいことが、幹を斜にした樹木の姿や、吹きつける風の肌ざわりで推察せら....
「日和下駄」より 著者:永井荷風
か》す曳船の往来する外《ほか》、東京なる大都会の繁栄とは直接にさしたる関係もない
泥海《どろうみ》である。潮《しお》の引く時|泥土《でいど》は目のとどく限り引続い....