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洋傘
「洋傘〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
洋傘の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
てそう云ってくれ。」
電話の切れるのが合図《あいず》だったように、賢造は大きな
洋傘《こうもり》を開くと、さっさと往来へ歩き出した。その姿がちょいとの間、浅く泥....
「或る女」より 著者:有島武郎
地は応接室を出た。かなりぬれているらしい靴《くつ》をはいて、雨水で重そうになった
洋傘《こうもり》をばさばさいわせながら開いて、倉地は軽い挨拶《あいさつ》を残した....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
とく、茂の下を流るるさえあるに、大空から賤機山の蔭がさすので、橋を渡る時、夫人は
洋傘をすぼめた。 と見ると黒髪に変りはないが、脊がすらりとして、帯腰の靡くよう....
「栃の実」より 著者:泉鏡花
が縫ってくれた鞄代用の更紗の袋を、斜っかいに掛けたばかり、身は軽いが、そのかわり
洋傘の日影も持たぬ。 紅葉先生は、その
洋傘が好きでなかった。遮らなければならな....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
に輝く、山際に翼を廻すは、白の脚絆、草鞋穿、かすりの単衣のまくり手に、その看板の
洋傘を、手拭持つ手に差翳した、三十ばかりの女房で。 あんぺら帽子を阿弥陀かぶり....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
声で長せた事、ものを云う笛を吹くか、と希有に聞える。 美しい女は、すっと薄色の
洋傘を閉めた……ヴェールを脱いだように濃い浅黄の影が消える、と露の垂りそうな清い....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
が寂しく見えます。華奢な事は、吹つけるほどではなくても、雪を持った向風にゃ、傘も
洋傘も持切れますめえ、被りもしないで、湯女と同じ竹の子笠を胸へ取って、襟を伏せて....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
余り数はなし、母衣を掛けて護謨輪を軋らせるほど、光った御茶屋には得意もないので、
洋傘をさして、抱主がついて、細かく、せっせと近所の待合小料理屋を刻んで廻った。 ....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
と気が付いた……ものらしい……で、懐中へ顎で見当をつけながら、まずその古めかしい
洋傘を向うの亜鉛塀へ押つけようとして、べたりと塗くった楽書を読む。 「何じゃ――....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
いが、群集の夥しい町筋を、斜めに奴を連れて帰る――二個、前後にすっと並んだ薄色の
洋傘は、大輪の芙蓉の太陽を浴びて、冷たく輝くがごとくに見えた。 水打った地に、....
「橋」より 著者:池谷信三郎
明るい街を、碧い眼をした三人の尼さんが、真白の帽子、黒の法衣の裾をつまみ、黒い
洋傘を日傘の代りにさして、ゆっくりと歩いて行った。穏やかな会話が微風のように彼女....
「明治十年前後」より 著者:淡島寒月
たものである。 読物はこの頃になっては、ずっと新しくなっていて、丁髷の人物にも
洋傘やはやり合羽を着せなければ、人々がかえり見ないというふうだった。二代目左団次....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
間しいまであわれに見える。 故あるかな、背後に迫って男が二人。一人の少い方は、
洋傘を片手に、片手は、はたはたと扇子を使い使い来るが、扇子面に広告の描いてないの....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
鏨、鉄鎚の幾挺か、安革鞄で斜にかけ、どうかするとヘルメット帽などを頂き、繻子の大
洋傘をついて山野を渡る。土木の小官吏、山林見廻りの役人か、何省お傭の技師という風....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
草の間に伐り残した松がところどころ樹っている。その中に軽い土くれと松落葉を集めて
洋傘高に盛り上っている。試みに杖などであばいて見ると、その中には山蟻が一杯群をな....