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洩れる
「洩れる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
洩れるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
《けしき》を和《やわら》げて、やがて口とも覚しい所から「南無《なむ》」と云う声が
洩れるや否や、たちまち跡方《あとかた》もなく消え失せたと申すのでございます。元よ....
「影」より 著者:芥川竜之介
受話器を耳へ当てた。
「私《わたし》の家《うち》へかけてくれ給え。」
陳の唇を
洩れる言葉は、妙に底力のある日本語であった。
「誰?――婆や?――奥さんにちょい....
「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
た。喜三郎《きさぶろう》は心配の余り、すぐにも医者を迎えたかったが、病人は大事の
洩れるのを惧《おそ》れて、どうしてもそれを許さなかった。
甚太夫は枕に沈んだま....
「首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
何小二は馬の背に揺られながら、創の痛みで唸っていた。が、彼の食いしばった歯の間を
洩れる声には、ただ唸り声と云う以上に、もう少し複雑な意味がある。と云うのは、彼は....
「路上」より 著者:芥川竜之介
しばらくはただあたりの机を睨《ね》めつけたように物色していたが、やがて向うの窓を
洩れる大幅《おおはば》な薄日《うすび》の光の中に、余念なく書物をはぐっている俊助....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
いた。十六人の女たちは、ほとんど正体《しょうたい》もないらしかった。彼等の口から
洩れるものは、ただ意味のない笑い声か、苦しそうな吐息《といき》の音ばかりであった....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
ば成程頭の上にはさっきよりも黒い夕立雲が、一面にむらむらと滲み渡って、その所々を
洩れる空の光も、まるで磨いた鋼鉄のような、気味の悪い冷たさを帯びているのです。新....
「十八時の音楽浴」より 著者:海野十三
そのときどこからともなく部屋のうちに、シュウシュウという、なにかパイプから蒸気の
洩れるような音が聞えてきた。 まっさきに夫人がそれに気がついた。彼女の紅をさし....
「壊れたバリコン」より 著者:海野十三
らすことの許されない同じような二つの機密社会であるために、この驚くべき事実が他へ
洩れる道が若しありとすれば、それは亡友Y――によって(いやもっと詳しく言えばY―....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
ンサーは、鉄塔の向うに見える厳かなJOAKビルの中にいた。スタディオの、黄色い灯
洩れる窓を通して、彼氏の短く苅りこんだ頭が見えていた。 「唯今から午後六時の子供....
「浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
……。なあに、彼等は飛行島めごく一部分だけを知っているのにすぎない。だから秘密が
洩れるといっても、飛行島全体の秘密がむきだしにわかるというのではない。それに、彼....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
。見ると、顔の色が真蒼になるとともに、垂々と血に染まるのが、溢れて、わななく指を
洩れる。 俊吉は突伏した。 血はまだ溢れる、音なき雪のように、ぼたぼたと鳴っ....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
消えんとする。 やがて、向直って階を下りて来た。引合わせている袖の下が、脇明を
洩れるまで、ふっくりと、やや円い。 牡丹を抱いた白鷺の風情である。 見まい。....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
山土に敷乱れた、枯草の中に咲残った、一叢の嫁菜の花と、入交ぜに、空を蔽うた雑樹を
洩れる日光に、幻の影を籠めた、墓はさながら、梢を落ちた、うらがなしい綺麗な錦紗の....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
居の近所を徘徊して容子を瞥見し、或る晩は軒下に忍んで障子に映る姿を見たり、戸外に
洩れる声を窃み聴いたりして、この女の態度から起居振舞、口吻までをソックリそのまま....