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「流離〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

流離の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
私の父と母」より 著者:有島武郎
っても、南方の血が多かった。維新の際南部藩が朝敵にまわったため、母は十二、三から流離の苦を嘗《な》めて、結婚前には東京でお針の賃仕事をしていたということである。....
虞美人草」より 著者:夏目漱石
《てくび》だけが白く見える。萩に伏し薄《すすき》に靡《なび》く故里《ふるさと》を流離人《さすらいびと》はこんな風に眺《なが》める事がある。故里を離れぬ藤尾は何を....
新版 放浪記」より 著者:林芙美子
くれる人はないものかしら……遠くへ去った男が思い出されたけれども、ああ七月の空に流離の雲が流れている。あれは私の姿だ。野花を摘み摘み、プロヴァンスの唄でもうたい....
半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
、今度の像に限って、おまけに、素足とも言わない、跣足がお痛わしい――何となく漂泊流離の境遇、落ちゅうどの様子があって、お最惜い。そこを鼠が荒すというのは、女像全....
水の女」より 著者:折口信夫
があるのは、後入の習合だからであろう。 いざなぎであった。 国々の神部の乞食流離の生活が、神を諸方へ持ち搬んだ。これをてっとり神部の本貫については、まだまだ....
盈虚」より 著者:中島敦
ったからである。過去の己に対して無関心だった諸重臣に向って彼は言った。余は久しく流離の苦を嘗め来たった。どうだ。諸子にもたまにはそういう経験が薬《くすり》だろう....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
数か月以来彼の心に浮かんでいる幻想のうちには、聖書の種々の幻影が交っていた。――流離中の友として母から贈られた聖書は、彼にとっては夢想の源であった。彼は宗教的な....
秦の憂愁」より 著者:豊島与志雄
地、到る所に見られる墓地のことが、新たな意味で頭に浮んだ。それから、天災や戦乱で流離常ならぬ農民のことが、新たに頭に浮んだ。 「土地です、土地に対する愛着です、....
十二神貝十郎手柄話」より 著者:国枝史郎
九州、奥羽に、連発した旱や大暴風雨や洪水、数万の人民はそれがために死に饑え苦しみ流離したが、そういう場合に施米をしたり、人心を鼓舞したり富豪を説いたりして、特別....
脱出と回帰」より 著者:中井正一
秩序の創造の探求であり、それは、実は人間性の本質への回帰であるべきであったのに、流離より流離へと、はてしもなき迷路が、娯楽の世界を支配している。いつになったら、....
詩語としての日本語」より 著者:折口信夫
たが、そう言えば、内容にも影響を見る事が出来る。「実をとりて胸にあつれば新なり。流離の憂ひ。海の日の沈むを見れば、たぎり落つ。異郷の涙」と言った藤村の「椰子の実....
役者の一生」より 著者:折口信夫
根をおろさなければならない頃になっても、歌舞伎座に帰れず、浅草あたりにいつまでも流離しなければならなかったのである。源之助は上達して名人になるためには、煩いにな....
世界の裏」より 著者:国枝史郎
の、最高政治機関の元老院、及びそれに追随するある衆愚の排撃によって、故国を去り、流離の後に自殺した。 こうしてローマによって突付けられた講和条件なるものは、(....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
我心を傷ましむ。 かつて我歌を楽み聞きし誰彼 猶世にありとも、そは今所々に散りて流離ひをれり。 昔あこがれし、静けく、厳しき霊の国をば 久しく忘れたりしに、そ....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
廷臣がすべて英雄になったとはいいたくない。鎌倉末の京都貴紳が数百年来未曾有の吉野流離という非常事を体験したことによって、その異常さを日常茶飯のことと感じるほど逞....