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浮かぬ顔
「浮かぬ顔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
浮かぬ顔の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
いるらしく、悠々と楫棒《かじぼう》を下ろしているのです。これを見た新蔵は、始めて
浮かぬ顔色の底に、かすかな情熱を動かしながら、それでもまだ懶《ものう》げな最初の....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
物騒ですもの。」 「ちっとは貯蓄ったか。」 と粗雑に廊下へ上る。先生に従うて、
浮かぬ顔の主税と入違いに、綱次は、あとの戸を閉めながら、 「お珍らしいこと。」 ....
「隣の嫁」より 著者:伊藤左千夫
々と交換されて、気の引き立つほどにぎやかになった。おとよさんは、今つい庭さきまで
浮かぬ顔色できたのだけれど、みんなと三言四言ことばを交えて、たちまち元のさえざえ....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
きたか」 「あ、おッ母さん、もう働くよ」 「ウムどうぞま、そうしてくろや。お前に
浮かぬ顔して引っ込んでいられると、おらな寿命が縮まるようだったわ」 中しきりの....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
、まだ起きないですか」 「ウム起きる、どうしたんだ」 見れば床にすわりこんで、
浮かぬ顔をしていた妻は、子どもの寝顔に目をとめ、かすかに笑いながら、 「まァかわ....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
また戦争かい」母親が心配そうに云った。 「シナ相手の戦争は儲らんで困るね」父親が
浮かぬ顔をした。 「まア、お父様は慾ばってんのねえ」と紅子が、わざとらしく眼を剥....
「蠅男」より 著者:海野十三
帆村は溜息をついた。 「それで犯人はどうしました」 検事はパイプを咥えたまま、
浮かぬ顔をして、 「――勿論逃げちゃったよ。なにしろこっちの連中は今まで機関銃に....
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
ける亜太郎の葬儀が済み次第、不二を検挙する旨を満足げに話した。けれども大月は一向
浮かぬ顔をして、うわの空で聞いていたが、やがて主任の話が終ると、突然意外なことを....
「三狂人」より 著者:大阪圭吉
錠を嵌られると、不貞腐れてその場へベタンと坐り込み、まるで夢でも見たように、妙に
浮かぬ顔をして眼をパチパチやり出した。 松永博士は、腰を揉みながら立上ると、片....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
は?」
「ウム、どうしても人形と創紋を不可分に考えなけりゃならんのかな」と法水も
浮かぬ顔で呟いた。
「この室がどうやら密室くさいので、出来ることなら幻覚と云いた....
「雷」より 著者:海野十三
しそうに見えた。 「北鳴の旦那。……」と、肩の重荷をまた一つ下ろした筈の松吉が、
浮かぬ顔で、彼を呼び止めた。 「なんだ、松さん。……素晴らしい出来栄えじゃないか....
「雨」より 著者:織田作之助
れて、円山公園へ行った。手拭を腰に下げ、高い歯の下駄をはき、寮歌をうたいながら、
浮かぬ顔をしていた。秀才の寄り集りだという怖れで眼をキョロキョロさせ、競争意識を....
「秋深き」より 著者:織田作之助
。私は妙な気持になって、部屋に戻った。 なんだか急に薄暗くなった部屋のなかで、
浮かぬ顔をしてぼんやり坐っていると、隣りの人たちが湯殿から帰って来たらしい気配が....
「透明人間」より 著者:ウェルズハーバート・ジョージ
まわしてみせた。 ホールは、まだ、ぼんやりとつっ立っていた。フィアレンサイドが
浮かぬ顔で、 「ホール、あのお客さまにけがはなかっただろうかね?」 「ひどくかみ....
「雨」より 著者:織田作之助
が匂う頃死ぬと決めていたのに危く助かった。 散歩が出来る様になり、ある雪の日、
浮かぬ顔で心斎橋を歩いていると、意外な男に会った。三高時代寄宿舎の同じ部屋にいた....