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浮立
「浮立〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
浮立の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「あらくれ」より 著者:徳田秋声
楽隊の響が聞えたり、地方から来る色々な団体見物の宿泊所が出来たりして、近い会場の
浮立った動揺《どよめき》が、ここへも遽《あわただ》しい賑かしさを漂わしていた。
....
「守の家」より 著者:伊藤左千夫
《もちつ》きも終えて、家の中も庭のまわりも広々と綺麗《きれい》になったのが、気も
浮立つ程嬉しかった。 「もう三つ寝ると正月だよ、正月が来ると坊やは五つになるのよ....
「オリンポスの果実」より 著者:田中英光
な版画をみているように、湿《しめ》り気のない空気が、全《すべ》てのものを明るく、
浮立《うきた》たせてみせてくれるのでした。
突然《とつぜん》、ぼくの脇《わき》....
「妖術」より 著者:泉鏡花
これを聞棄てに、今は、ゆっくりと歩行き出したが、雨がふわふわと思いのまま軽い風に
浮立つ中に、どうやら足許もふらふらとなる。 四 門の下で、後を振....
「無惨」より 著者:黒岩涙香
真面目の町人でも無い何うしても博奕など打つ様な惰け者だ」大鞆は真実感心せしか或は
浮立せて猶お其奥を聞んとの巧計なるか急に打開けし言葉の調子と為り「イヤ何うも感心....
「朝の風」より 著者:宮本百合子
しく瑞々しければ瑞々しいほど、その奥のあぶなっかしい長屋の黒さが鋭い対照をなして
浮立って来て、そこには油絵具でなければうつせないような濃い人の心をうつ荒廃の美が....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
たところも満地の月。月光、水の如くひたひたと流れているものですから、茂太郎の心が
浮立って歩む足どりも躍るように、精いっぱいの声を張り上げて、宮原節を歌い出しまし....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
くりだすので、見ている観客までがその場の、一場景につかわれる見物人にもなるので、
浮立ってくる心理が、とても、こくのある甘さとなって、演じる役者もみるものも、とう....
「画舫」より 著者:豊島与志雄
て、知人をやたらにそこへ引張り込んだのでした。彼はなにかしら、心が苛立ってるとも
浮立ってるとも見えるのでありました。 室の床には、水瓜の種の皮や、向日葵の種の....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
かく、庄吉の身の上は、益満がしかと引受けるから、黙って、化粧でもして――さ、気を
浮立たせて、久し振りに
三日月さまかや、ちらと見た
細身の刀は、主かいな
小唄....
「日蔭の街」より 著者:松本泰
私にとってこんないい条件はない。然しながらこれ程の幸運に面しながら、私の心が
浮立ないのは、恐らくモニカのことが頭脳の何処かに潜んでいたせいであろう。とはいえ....
「平賀源内捕物帳」より 著者:久生十蘭
出たが、先生の胸中には悲哀の情と佶屈《きっくつ》の思いがあるので、どうしても気が
浮立たない。 そのうちに食卓開始の合図の鐘が鳴って、一同の後につづいて食堂に入....
「上野」より 著者:永井荷風
、根津の廓からの流丸《それだま》ならずば権君御持参の高帽子、と女中はてん/″\に
浮立つゝ、貯蓄《とつとき》のイラツシヤイを惜気もなく異韻一斉さらけだして、急ぎい....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
うじ》は広く明け放され桜花は模様の如く薄墨《うすずみ》の地色《じいろ》の上に白く
浮立ちたり。この模様風の背景をひかへし人物もまた極《きわ》めて人形らしく、その男....
「霊廟」より 著者:永井荷風
相対して立つ御手洗《みたらし》の石の柱の整列とは、いずれも幽暗なる月の光の中に、
浮立つばかりその輪郭を鋭くさせていたので、もし誇張していえば、自分は凡て目に見る....