涙腺[語句情報] » 涙腺

「涙腺〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

涙腺の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
暇もないので、両方の中指を眼がしらのところにあてて、俯向《うつむ》いたままじっと涙腺を押えていた。 渡瀬さんはしばらくぼんやりしていたが、きゅうに慌てはじめた....
行人」より 著者:夏目漱石
それなり宅《うち》へ帰ったと云っていました」 父はその時始めて盲目《めくら》の涙腺《るいせん》から流れ出る涙を見た。 「失礼ながら眼を御煩《おわずら》いになっ....
古き小画」より 著者:宮本百合子
スタムの眼では、燈の色も、盃の形も次第にぼやけ歪んで来た。彼は、鼻の奥にむずむず涙腺から流れ下るものを感じた。 ルスタムは自分を叱るように、盃を握ると、一いき....
鎖骨」より 著者:寺田寅彦
|挫折」のような役目をするためにどこかがどうかなるのかもしれない。 悲しいとき涙腺から液体を放出する。おかしいとき横隔膜が週期的|痙攣をはじめる。これも何か、....
自由画稿」より 著者:寺田寅彦
ったような悲しみの涙をしぼって見せれば、元来泣くように準備のととのっている観客の涙腺《るいせん》は猶予《ゆうよ》なく過剰分泌を開始するのであって、言わば相撲《す....
原爆詩集」より 著者:峠三吉
るのは いまからでもおそくはない 戦争を厭いながらたたずむ すべての優しい人々の涙腺を 死の烙印をせおうあなたの背中で塞ぎ おずおずとたれたその手を あなたの赤....
病院風景」より 著者:寺田寅彦
年札幌へ行って、明治時代の時計台建築の遺物を見て涙が出そうな気がした。年を取ると涙腺の居ずまいが変ると見える。 「鉄門」も塞がれた。鉄門という言葉は明治時代の隅....
武蔵野」より 著者:山田美妙
うな独語の中でも)「まさか殺されはせまい」の推察が虫の息で活きている。それだのに涙腺は無理に門を開けさせられて熱い水の堰をかよわせた。 このままでややしばらく....
肝臓先生」より 著者:坂口安吾
んとするものである。汝が詩を書かねばならぬのは、この肝臓の碑面であるよ」 私は涙腺がシッカリしているから、とてもキチガイにウマを合わせることができない。 「詩....
青鬼の褌を洗う女」より 著者:坂口安吾
に盲いる先に孤独に盲いている。だから恋に盲いることなど、できやしない。彼は年老い涙腺までネジがゆるんで、よく涙をこぼす。笑っても涙をこぼす。しかし彼がある感動に....
夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
に属する事だぜ。それに、眼球の上に落ちた血滴が少しも散開していない。そうすると、涙腺が極度に収縮しているのが判るだろう。つまりその凡てが、異常な恐怖心理の産物で....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
は武者修行の眼だ――死なんとするのを知っているその眼である――血ばしっている中に涙腺はかすかに涙みたいなものを湛えている。 「……たっ……た……たのむ……」 ....
黒田如水」より 著者:吉川英治
ぐった。この知覚さえ生きている証拠ではないか。有難さにまたも新しい泉がこんこんと涙腺を熱する。 「……乗っているのは戸板かな?」 やっと、そんな考えにまで及ん....