»
涸
「涸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
涸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
の幹に頭を打ちつけるか、湖の底に身を投ずるか、一気に自己を亡すべき、最後の力さえ
涸《か》れ尽きていた。だから彼は心身とも、まるで破れた船のように、空しく騒ぎ立つ....
「夜行巡査」より 著者:泉鏡花
のうちに忘れたる、饑《う》えと寒さとを思い出し、あと泣き出だす声も疲労のために裏
涸《うらが》れたり。母は見るより人目も恥じず、慌《あわ》てて乳房《ちぶさ》を含ま....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
しに流れている。おなじこと、たしない水である。あとで手を洗おうとする時は、きっと
涸れるのだからと、またしても口金をしめておいたが。―― いま、午後の三時ごろ、....
「地獄の使者」より 著者:海野十三
かし一同の前に現われたお末なる女は予想に反して、もっと年をとった、そして黄色く乾
涸びたような貧弱な暗い女性だった。痩せた顔は花王石鹸の商標のように反りかえってい....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
の燃ゆるがごとき演劇は、あたかもこの轍だ、と称えて可い。雲は焚け、草は萎み、水は
涸れ、人は喘ぐ時、一座の劇はさながら褥熱に対する氷のごとく、十万の市民に、一剤、....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
ある。 柳のもとには、二つ三つ用心|水の、石で亀甲に囲った水溜の池がある。が、
涸れて、寂しく、雲も星も宿らないで、一面に散込んだ柳の葉に、山谷の落葉を誘って、....
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
りはしません、ぽたぽたぐらい。一人児だから、時々飲んでいたんですが、食が少いから
涸れがちなんです。私を仰向けにして、横合から胸をはだけて、……まだ袷、お雪さんの....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
きながら頭を振る。 「貴方ばかり殺しはせん。これお見やす、」と忘れたように、血が
涸れて、蒼白んで、早や動かし得ぬ指を離すと、刻んだように。しっかと持った、その脈....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
の椀を炉の中へ突込んで、ぱっと立つ白い粉に、クシンと咽せたは可笑いが、手向の水の
涸れたようで、見る目には、ものあわれ。 もくりと、掻落すように大木魚を膝に取っ....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
ある。 「……小県さん、ほんとうの小県さんですか。」 この場合、声はまた心持|
涸れたようだが、やっぱり澄んで、はっきりした。 夏は簾、冬は襖、間を隔てた、も....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
、初代元祖、友禅の墓がありましょう。一頃は訪う人どころか、苔の下に土も枯れ、水も
涸いていたんですが、近年他国の人たちが方々から尋ねて来て、世評が高いもんですから....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
に沼の中心に影が澄んで、そこにこそ、蒼沼の名に聞ゆる威厳をこそ備えたれ。何となく
涸れて荒びて、主やあらん、その、主の留守の物寂しい。 濃い緑の雑樹の中へも、枝....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
はホンの束の間、後はただ思い出しては泣き、更に思い出しては泣き、よくもあれで涙が
涸れなかったと思われるほど泣いたのでございました。元来私は涙もろい女、今でも未だ....
「初雪」より 著者:秋田滋
世のひとの顔とも思われない。そして頻りに咳をした。彼女はそのたびに、自分の精根を
涸らしてしまう、込み上げて来るその動揺をおさえようとするためなのであろう。透き通....
「絹と紙の話と師弟の間柄の話」より 著者:上村松園
は、どんな風もこんな風も描き方には何も変った方法などありませぬ。唯この絹地は少し
涸らした生絹に湯引きをしたのを使用してますので、それが真新しい生絹やどうさ引など....