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「淡泊〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

淡泊の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
浜菊」より 著者:伊藤左千夫
しい若葉の時だし、拵えようと云い、見た風と云い、素朴の人の心其のままじゃないか。淡泊な味に湯だった笹の香を嗅《か》ぐ心持は何とも云えない愉快だ」 「そりゃ東京者....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
半七は岡っ引の仲間でも幅利きであった。しかし、こんな稼業の者にはめずらしい正直な淡泊した江戸っ子風の男で、御用をかさに着て弱い者をいじめるなどという悪い噂は、か....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
慮している。 冷奴の平民的なるに対して、貴族的なるは鰻の蒲焼である。前者の甚だ淡泊なるに対して、後者は甚だ濃厚なるものであるが、いずれも夏向きの食い物の両大関....
地獄の使者」より 著者:海野十三
こに鎮座ましますのかな。ああ、あれか。わしより若いくせに、早やこの世におさらばの淡泊なのが羨しいね」 古堀老博士は、例のとおりに喋り散らしながら、携げて来た大....
灯明之巻」より 著者:泉鏡花
なよなよとしているのである。緋も紅も似合うものを、浅葱だの、白の手絡だの、いつも淡泊した円髷で、年紀は三十を一つ出た。が、二十四五の上には見えない。一度五月の節....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
自分が美人であることを何とも思わなくなっているような女だった。この夫人にそういう淡泊な処もあるので随分突飛な事や執つこい目に時々遇っても新吉は案外うるさく感じな....
貞操問答」より 著者:菊池寛
、唇をそらした美和子の表情の方が、姉よりは、ずーっと陰翳があった。 天性明るく淡泊な美和子ではあったが、しかし、意地っぱり屋であった。 美沢の心の中に、新子....
茶の湯の手帳」より 著者:伊藤左千夫
、耳に偏せず、濃淡宜しきを計り、集散度に適す、極めて複雑の趣味を綜合して、極めて淡泊な雅会に遊ぶが茶の湯の精神である、茶の湯は人に見せるの人に聴せるのという技芸....
瘠我慢の説」より 著者:石河幹明
る債権あり、新政府にてこれを引受けらるることなれば、毛頭差支なしとてその挨拶甚だ淡泊なりしという。仏国が殊に幕府を庇護するの意なかりし一|証として見るべし。 ....
明暗」より 著者:岡本かの子
処に後見やら家政婦やらを兼ねていた中老の叔母からもよくもてなされ、その叔母さんの淡泊な性質はむしろ好んで来たのであるが、三木雄の教養に対する叔母さんの無頓着さに....
白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
のしからしむる処ですかな。あるいは、あなた方、先生の教えは、芸に熱して、男女間は淡泊、その濃密|膠着でなく、あっさりという方針ででもおあんなさるか、一度内々で、....
三枚続」より 著者:泉鏡花
したか。) (ええ、)と頷く。 (痛かったでしょう。) (はあ、)と事もなげに、淡泊に答えたのである。 光起は微笑んで、 (貴女、母様のいうことを肯かないとま....
二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
ながら少しも政治家らしくなかった人、実業家を希望しながら企業心に乏しく金の欲望に淡泊な人、謙遜なくせに頗る負け嫌いであった人、ドグマが嫌いなくせに頑固に独断に執....
西航日録」より 著者:井上円了
一泊す。当日、気候にわかに春暖を加え、野外の風光、麦緑菜黄、これに交うるに杏梨の淡泊をもってす。宛然わが国の田舎を旅行するがごとし。オランダは全国に山岳はもちろ....
ベートーヴェンの生涯」より 著者:片山敏彦
好かれ悪しかれ、結果と帰着とについての考えを一切逐い払え。なぜなら、このような|淡泊な沈着だけが、精神的なるものへの熱中であるから。ただ叡智のみを避難所とせよ…....