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深林
「深林〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
深林の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
物だ。その耳はやむ時なき猜疑に震えている。彼は頑丈な石窟に身を託する事も、幽邃な
深林にその住居を構えることも出来ない。彼は小さな藪の中に彼らしい穴を掘る。そして....
「河明り」より 著者:岡本かの子
る女出入や、その他の素行に就いて、私はまるで私立探偵のように訊き質すのであった。
深林の夜は明け放れ、銀色の朝の肌が鏡に吐きかけた息の曇りを除くように、徐々に地霧....
「田原坂合戦」より 著者:菊池寛
雄少将の弟)に率いられて、立岩の塁を攻めた。薩軍は、砲を山頂に設け、銃隊を山腹の
深林中に隠して、射撃する。絶頂で篠原と共に指揮して居た薩将村田は、「両翼を張って....
「獏鸚」より 著者:海野十三
っているじゃないか」 「うん。それから……」 「それから?……獏は性|怯にして、
深林に孤棲し、夜間出でて草木の芽などを食す。いやまだ食うものがある。人間が夜見る....
「妖僧記」より 著者:泉鏡花
一 加賀の国|黒壁は、金沢市の郊外一|里程の処にあり、魔境を以て国中に鳴る。蓋し野田山の奥、
深林幽暗の地たるに因れり。 ここに摩利支天を安置し、これに冊く山伏の住える寺院....
「加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
ていた。その距離一里というのだから、互いの顔さえ解りそうである。 そのドームの
深林の中に天幕が幾十となく張ってあった。大英国の探険家ジョージ・ホーキン氏の一隊....
「黄金の腕環」より 著者:押川春浪
で、談話上手の伯爵が、手を振り声を潜め眼を円くして、古城で変な足音の聴えた事や、
深林に怪火の現われた事など、それから夫れへと巧に語るので、娘達は恐ければ恐い程面....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
ばかり焦せっているようだ。 火足は間近に迫って来た。ちょうど紅でも流したように
深林の中は真紅である。熱に蒸されて私の背中は滝のように汗が流れている。この大危険....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
人の賢者達のことを想い浮べている。………(沈黙) (ひとりで恍惚として) 独長嘯
深林人不 (独り言のように)……竹里ノ館か、……知ってるだろう? 王維の詩だ。 ....
「バットクラス」より 著者:岡本かの子
ンよりもずっと清新なニューヨーク街の雑沓や速力の早い汽車の南側から眺める米大陸の
深林の緑が夫人の空想のなかに浸み込む。だがそれもやがて夫人の頭の倦怠素ににぶく溶....
「迷信解」より 著者:井上円了
は、必ずいろいろの事情が伴っておる。例えば、深夜野外を独行するとき、または薄暮、
深林の中を通行するとき、あるいは狐が住すると伝えらるる場所に通りかかりたるとき、....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
返すことにした。二十丁も戻って初めの沢近く来た時、ふと前面を見ると、例の落葉松の
深林が背後から午後の日をうけてパッと輝いている。根元の方にも日の光は漏れて、幹は....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
のみは常磐の緑を誇って、一丈に余る高い梢は灰色の空を凌いで矗々と聳えていた。この
深林を背景に、重太郎は無言の俳優として舞台に立っていた。 彼は恋しいお葉と泣い....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
地名はマンサニヨなり。サリナクルスより六百マイルを隔つ。峰巒草木茂生し、浜頭また
深林鬱立す。久しく禿山のみを見てこの翠影に接するは、大いに目をたのしましむるに足....
「草木の暗示から」より 著者:小川未明
知れない。 こうしたことは、恐らく昔のある時代にはなかったことでしょう。海に、
深林に、また野獣に脅かされた、其の当時の人々は、また、同時に自然の慈愛をも充分に....