深沈[語句情報] »
深沈
「深沈〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
深沈の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
もし、腹を立っちゃいけませんよ、失礼だが、私が仕送ってあげようじゃありませんか」
深沈なる馭者の魂も、このとき跳《おど》るばかりに動《ゆらめ》きぬ。渠は驚くよりむ....
「河口湖」より 著者:伊藤左千夫
津へいでた。舟津の家なみや人のゆききや、馬のゆくのも子どもの遊ぶのも、また湖水の
深沈としずかなありさまやが、ことごとく夢中の光景としか思えない。 家なみから北....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
《やみ》がひときわ濃いときがあるといいます。明け方の闇は、夜中の闇よりもいっそう
深沈として――その暁闇《ぎょうあん》につつまれた左膳、源三郎、萩乃の三人は、それ....
「煩悩秘文書」より 著者:林不忘
て刻々に黒さを増し、空を屋根のこのいで湯の表は、高い夕雲の去来を宿して、いっそう
深沈《しんちん》と冴《さ》え返ってくる。 谷あいに群立つ岩のあいだに、一枚の小....
「蒲生氏郷」より 著者:幸田露伴
氏郷がただ凝然と黙々として居る。侍座して居たのは山崎家勝というものだった。如何に
深沈な人とは云え、かかる芽出度き折に当って何か考えに沈んで居る主人の様子を、訝《....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
正座した左膳の態度につりこまれて、源十郎の顔からも薄笑いが消えた。
二人を包む
深沈《しんちん》たる夜気に、はや東雲《しののめ》の色が動いている。
ただ廊下に....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
カ走るのが、敷居のそとから、気味わるく見えるのです。
ちょっとはいれない……。
深沈たる夜気がこって、鼓膜《こまく》にいたいほどの静寂。これは、声のない叫喚だ。....
「銅銭会事変」より 著者:国枝史郎
は出来ない」甲斐守は苦り切った。 変な噂は聞かなかったかな? 甲斐守は
深沈大度、喜怒容易に色に出さぬ、代表的の役人であった。今度に限ってその甲斐守が、....
「自警録」より 著者:新渡戸稲造
勇ありて義なければ盗《とう》をなす」と。 じつにそのとおりで、古人の語に、 「
深沈《しんちん》厚重《こうちょう》は是《こ》れ第一等の資質《ししつ》、磊落《らい....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
足を折り、彼らの前へ蹲まった。 教徒の唱える讃美の声はその時ひときわ高くなり、
深沈と寂しい音楽の音は次第に急速に鳴り渡った。空間に手を上げ手を下げて何物かを熱....
「魔像」より 著者:林不忘
が着衣の風に煽《あお》られたのだ。その、白っぽい光線の沈む座敷……耳をすますと、
深沈《しんちん》たる夜の歩調のほか、何の物音もしない。 が、生き物には、生きも....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
奉行池田甲斐守と控同心の藤波友衛が、さしうつむいたまま、ひっそりと対坐している。
深沈《しんちん》たる夜気の中で、とぎれとぎれに蟋蟀《こおろぎ》が鳴いている。これ....
「つづれ烏羽玉」より 著者:林不忘
そうなって来たある夜。 おそく寝る下町もすっかり大戸をおろして、人も草木も
深沈と眠る真夜中。 突如! 浮世小路、いろは寿司の表を、割れんばかりにたたく....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
れ出て庭上《にわ》に倒れている行燈の焔影だけである。何ごともなかったように、夜は
深沈と朝への歩みをつづけるばかり――。 検《あらた》めるまでもなく、お美野は扼....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
涌出するむくりむくりの塊り。 しかも、見るものは空と海との大円盤である。近くは
深沈としたブリュウブラックの潮の面に擾乱する水あさぎと白の泡沫。その上を巨きな煙....