深淵[語句情報] »
深淵
「深淵〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
深淵の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
この景色のどこに自分は身をおく事ができよう。葉子は痛切に自分が落ち込んで行った
深淵《しんえん》の深みを知った。そしてそこにしゃがんでしまって、苦《にが》い涙を....
「本州横断 癇癪徒歩旅行」より 著者:押川春浪
れば、この渓流には瀑布《たき》もあれば、泡立ち流るる早瀬もあり、また物凄く渦巻く
深淵などもあって、好奇《ものずき》に盥に乗って下《くだ》ろうものなら、二人や三人....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
て冬となる。揚子江の上流金沙江の大絶壁。じつに、雲をさく光峰《ピーク》からくらい
深淵の河床にかけ、見事にも描くおそろしい直線。それが、一枚岩というか屏風《びょう....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
のだったが、ちょうど結婚後一年ばかり過ぎた頃に、思いがけない落盤の惨事が、二人を
深淵に突き落してしまった。ところが十四郎は、運よく救い出された三人のうちの一人だ....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
失いながらもこの恐ろしい魔術のような力に抵抗しようとした。破滅が眼の前に迫った。
深淵が脚の下に開けた。そう思って彼女は何とかせねばならぬと悶えながらも何んにもし....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ったのですが、いったん悪い方へ踏み込むと、もう抜き差しが出来なくなって、だんだん
深淵に落ちて行く。取り分けて俊乗などは、いい寺にいたらば相当の出世が出来たのかも....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ホイッチアを引用すると、クリヴォフ夫人は冷笑を湛えて、
「いいえ、|されど未来の
深淵は、その十字架の測り得ざるほどに深し――ですわ」と云い返したが、その冷酷な表....
「獏鸚」より 著者:海野十三
あっちへ行ったり、こっちへ来たりしていた。――虫籠のようなマイクロホンが、まるで
深淵に釣を垂れているように、あっちに一つ、こっちに一つとぶら下っている。 「見給....
「河童小僧」より 著者:岡本綺堂
し真実の人間とすれば、右の如き大雨と云い夜中と云い、殊に彼のドンドンの如き急流の
深淵に於て、迚も無事に浮び上れよう筈も無し、さりとて其死体の見当らぬも不思議、正....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
旅しつつ廻るのと、児戯に類する事を学ばんや。東京に出でばかかる事はあるまじ。龍は
深淵にあらねば潜れず、東京へ出て我が才識を研ぎ世を驚かすほどの大功業を建てるか、....
「壁の眼の怪」より 著者:江見水蔭
下手の方へと行ったのであった。 「あッ」 いくらか断崖の低くなっている処。下の
深淵へ覗く様にして出張っている大蝦蟇形の岩があった。それに乗って直芳が下を見た時....
「おばけずきのいわれ少々と処女作」より 著者:泉鏡花
よりも、布教者の人格いかんに関することの多いという実際を感じ得た。 僕が迷信の
深淵に陥っていた時代は、今から想うても慄然とするくらい、心身共にこれがために縛ら....
「妖怪玄談」より 著者:井上円了
聞きて一心にこれを聴かんとするときは、知らず識らずその方に耳を傾くるに至り、また
深淵に臨んで、心ひそかにそのまさに陥らんとするを恐るるときは、知らず識らずその足....
「層雲峡より大雪山へ」より 著者:大町桂月
して、戻りは宿の提燈に迎えられぬ。塩谷氏は年少気鋭、歩くこと飛ぶに似たり。誤って
深淵に落ちけるが、水泳を心得おるを以て、着物を濡らせしだけに止まりたりき。山に登....
「春風遍し」より 著者:小川未明
うに感じられるのであります。若いうちは、ベクリンの描いた如く、孤独な、また暗い、
深淵のような感じを死に対して持ったが、この頃年をとってからは、大分ちがって灰色に....