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深閑
「深閑〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
深閑の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「党生活者」より 著者:小林多喜二
度のところも倉田工業のある同じ地区にも拘らず、ゴミ/\した通りから外《は》ずれた
深閑とした住宅地になっていた。それにいいことには、しん閑とした長い一本道を行くと....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
ない私達は、逃げるより外に方法もない。朝の誰もいない広々とした食堂の中は恐ろしく
深閑としていて、食堂のセメントの池には、赤い金魚が泳いでいる。部屋には灰色に汚れ....
「魔像」より 著者:蘭郁二郎
一緒に玄関の戸を押開け含んだ声で案内を乞うてみた。だが、誰もいないのか、家の中は
深閑として、なんの返事もなかった。 寺田は、暫らく間をおいて、冷えて来た足を小....
「蝱の囁き」より 著者:蘭郁二郎
ーッと、そのくせ表べは知らん顔をして待っていたのであった……。 ×
深閑として、午前の陽を受けている。このサナトリウムに沁みわたるように鐘が鳴った。....
「メーデーに歌う」より 著者:宮本百合子
わってしまっているからなのでもある。 メーデーの日、モスクワの街々は、かえって
深閑としている。あらゆる人群は、モスクワの中央部へ、赤い広場へと注ぎこまれて、す....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
ちに、いつの間にかまぎれさったものであろう。弥生も、夜泣きの刀も近くに影がない。
深閑として、陽の高い森の奥。
雨のような光線の矢が木々の梢を洩れ落ちて、草葉の....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
、三つ葉|葵《あおい》の金紋六十余州に輝いた、八代吉宗といえば徳川も盛りの絶頂。
深閑とした大奥。
松をわたってくる微風《かぜ》が、お湯どのの高窓から吹きこんで....
「台湾の姿態」より 著者:豊島与志雄
。煉瓦造りの本屋に円蓋をそばだたせ、左右に翼を張り、瓦屋板を前方につきだし、広い
深閑たる土間を礼拝所とした。この構想は、当時種々の批評を招き、井手氏は中途で建造....
「怪異に嫌わる」より 著者:豊島与志雄
だ一つ、二尺四方ぐらいの小窓があるきりだ。如何に暴風雨の時でも、その中にはいれば
深閑として、まるで洞窟にでもはいったよう。家人もめったにはいらず、掃除なども殆ど....
「絶縁体」より 著者:豊島与志雄
を許された。つまり、凡てが出来る限り簡単に明確に取り行われた。 それが済むと、
深閑とした日々が市木さんに続いたようだった。そして十日ばかりたって、例の竹垣を跨....
「腐った蜉蝣」より 著者:蘭郁二郎
は、無意味に、 『ふふふふ……』 と笑合ったが、それもすぐに杜絶えてしまった。
深閑とした部屋の中に、天井から蜘蛛のようにぶら下った電球の下で、この哀れな二人の....
「蝕眠譜」より 著者:蘭郁二郎
黒住の家を抜け出すと、あてもなく夜の道に彷徨い出た。 (人形、ルミ……) 夜は
深閑と更けて、彼方の骸骨のような森の梢には、細いいまにも破け落ちそうな月がひっか....
「放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
い私達は、逃走するより外なかった。 朝の誰もいない広々とした食堂の中は恐ろしく
深閑として、食堂のセメントの池に、赤い金魚がピチピチはねている丈で、灰色に汚れた....
「濁酒を恋う」より 著者:佐藤垢石
。女房が、樽の口を引いたらしいのだ。折りから夜半の一時近い頃だから、近所となりは
深閑としている。ゴク、という音が玄関の三和土の土間に反響して、何とも快い律調を耳....
「貝鍋の歌」より 著者:中谷宇吉郎
みついてみると、北海道の冬は、夏よりもずっと風情がある。風がなくて雪の降る夜は、
深閑として、物音もない。外は、どこもみな水鳥のうぶ毛のような新雪に、おおいつくさ....