» 渋る

「渋る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

渋るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
にひたりながら、物さびしくそう思って、また机の上に目を落とした。 筆はますます渋るばかりだった。軽い陣痛のようなものは時々起こりはしたが、大切な文字は生まれ出....
三枚続」より 著者:泉鏡花
僧という柄にあらず、書生では無論ない。年若には似ない克明な口上振、時々ものいいの渋るといい、何でも口うつしに口上を習って路々暗誦でもして来たものらしい。 かか....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
に、私たちの会話は若い殿方の感情をどんなに害するでしょう」と、バーグレーヴ夫人は渋るように言って、「なぜあなたご自身でおっしゃらないのです。私はそのほうがずっと....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
塚山へつくと、多鶴子は泊って行けと意外なことを言った。 「でも……」と、さすがに渋ると、多鶴子は、 「そんな体ではひとりで帰れないわ」 まるで豹一の体をかかえ....
死者の書」より 著者:折口信夫
では、広目天の方はと言うと、 さあ、其がの――。 と誰に言わせても、ちょっと言い渋るように、困った顔をして見せる。 実は、ほんの人の噂だがの。噂だから、保証は出....
大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
てノメノメ帰られもしないで、知行所へ行って見るとどうした風の吹き廻しか、いつもは渋る嘉右衛門が二つ返辞で承知をしてくれ、いい出した倍の二百両というもの融通をして....
工場細胞」より 著者:小林多喜二
きっているらしかった。 ――つらいなア……! フッとそれが出る。朝やっぱり出渋るのだ。 ――仕事より親方の顔ば見てれば、とッても……なア! まだ暗い出掛....
投手殺人事件」より 著者:坂口安吾
海のものとも山のものともつかないニューフェイスに、三百万はおろか、三十万でも社で渋るのが当然なわけだ。けれども、君とコミにして、君たちに必要な三百万、耳をそろえ....
藁草履」より 著者:島崎藤村
か》の声のする暗い隅の方へとかく逡巡《しりごみ》ばかりして、いつもの元気もなく出渋るやつを、無理無体に外へ引出しました。お隅の萎れた身体は鞍《くら》の上に乗せ、....
街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
という鼻がかったアクセントを聞くと、いよいよ間違いはない。お神《かみ》が買い渋るのを、怒鳴り付けて買わせるのも大抵は江戸ッ子である。それから、買うとすぐに器....
幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
など考えて見たことのない生初心な若者|故、いざ行くとなると気が差してなかなか行き渋る。が、或る晩、晩飯を済まし、裏口から、酒の切手を手土産にして思い切って出掛け....
自作を語る」より 著者:太宰治
五枚書くと大威張りだ。描写が下手だから苦労するのである。語彙が貧弱だから、ペンが渋るのである。遅筆は、作家の恥辱である。一枚書くのに、二、三度は、辞林を調べてい....
さようなら」より 著者:田中英光
殺されたりの血腥《ちなま》ぐさい禁欲耐忍の日々が続く中、岡田がぼくに返事さえ云い渋るほど無口になってゆくのに気づいた。 そんな岡田はある朝、前の野営地に自分の....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
鍵がかかっていたりした。彼女の行くのは、大抵シネマ・パレスか南明座あたりで、筆が渋ると映画に救いを求めに行くのだったが、部屋をあけるのは、そのためばかりとも決め....
小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
かんとしてまた片唾をのみぬ。彼はつねに誇るその流滑自在なる舌の今日に限りてひたと渋るを怪しめるなり。 山木はわずかに口を開き、 「実は今日は川島家の御名代でま....