渋団扇[語句情報] » 渋団扇

「渋団扇〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

渋団扇の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
文章」より 著者:芥川竜之介
にも、ある家の軒下《のきした》に佇《たたず》んだ甚平《じんべい》一つの老人などは渋団扇《しぶうちわ》を額《ひたい》へかざしたまま、「ははあ、十五円の葬《とむら》....
箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
っていた。人を慕ってすぐに襲って来る藪蚊の唸り声におびやかされて、綾衣はあわてて渋団扇《しぶうちわ》を手にとった。 間違って人に妬まれた我が身が、今はかえって....
両国の秋」より 著者:岡本綺堂
は薬鍋を持ち出して来て、火鉢の上で煎じはじめた。林之助は黙って煙草をのみながら、渋団扇で火を煽いでいるお君の小さい手さきを唯ぼんやりと眺めていた。やがて鍋の蓋が....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
番太郎の家は大抵自身番のとなりにあって、店では草鞋でも蝋燭でも炭団《たどん》でも渋団扇《しぶうちわ》でもなんでも売っている。つまり一種の荒物屋ですね。そのほかに....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
した。 焼きざましの団子をもう一度あぶり直して、女房はいそがしそうに薬鑵の下を渋団扇であおいでいた。 「おかみさん。この頃はおまいりがたくさんありますかえ」と....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
店のまえに来た。小料理屋といっても、やはり荒物屋兼帯のような店で、片隅には草鞋や渋団扇などをならべて、一方の狭い土間には二、三脚の床几が据えてあった。その土間を....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
白の小粋な男で、手甲脚絆のかいがいしい扮装をして、肩にはおでんの荷を担ぎ、手には渋団扇を持って、おでんや/\と呼んで来る。実に佳い声であった。 元園町でも相当....
薬草取」より 著者:泉鏡花
えて、振分けにして肩に投げて、両提の煙草入、大きいのをぶら提げて、どういう気か、渋団扇で、はたはたと胸毛を煽ぎながら、てくりてくり寄って来て、何処へ行くだ。 ....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
さりと捲ると、月代茶色に、半白のちょん髷仮髪で、眉毛の下った十ばかりの男の児が、渋団扇の柄を引掴んで、ひょこりと登場。 「待ってました。」 と頬被が声を掛けた....
大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
と見れば僧でもなく俗かと見れば僧のようでもある。季節は早春の正月だというのに手に渋団扇を持っている。脛から下は露出で足に穿いたのは冷飯草履。……この風態で尾行ら....
おせん」より 著者:邦枝完二
のように深かった。 母は直ぐに勝手へ取って返したと見えて、再び七|厘の下を煽ぐ渋団扇の音が乱れた。 暗い、何者もはっきり見えない部屋の中で、おせんはもう一|....
式部小路」より 著者:泉鏡花
ったでしょう。 可かろう、で、鍍金の奴が腕まくりをして、ト睨み合うと、こけ勘が渋団扇を屹とさして、見合って、見合ってなんて遣ったんですって。 表も裏も黒山の....
雪柳」より 著者:泉鏡花
はない、姑が虐げるのでもない。安達ヶ原でない証には、出刃も焼火箸も持っていない、渋団扇で松葉を燻していません。ただ黒い瓶を一具、尻からげで坐った腰巻に引きつけて....
明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
は、二、三日前の雪が少しばかり消え残っていた。いつも来るおでん屋が荷をかついで、渋団扇を持って通った。このおでん屋は士族の果てであるらしく、ちょん髷に結っている....
思い出草」より 著者:岡本綺堂
白の小粋な男で、手甲脚袢の甲斐甲斐しい扮装をして、肩にはおでんの荷を担ぎ、手には渋団扇を持って、おでんやおでんやと呼んで来る。実に佳い声であった。 元園町でも....