渋柿[語句情報] »
渋柿
「渋柿〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
渋柿の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「服装に就いて」より 著者:太宰治
怪に変色している。謂わば、羊羹色《ようかんいろ》である。薄赤い縦横の縞は、不潔な
渋柿色を呈して老婆の着物のようである。私は今更ながら、その着物の奇怪さに呆《あき....
「「いき」の構造」より 著者:九鬼周造
から来ているのであろう。しかるに柿は「渋味」のほかになお「甘味」をももっている。
渋柿に対しては甘柿がある。それ故、「渋味」の対立者としては「甘味」を考えても差支....
「闇の書」より 著者:梶井基次郎
られるんですもの」と言って母は媚《なまめ》かしく笑った。 「ところがあれやみんな
渋柿だ。みな干柿にするんですよ」と私も笑った。 柿の傍には青々とした柚《ゆず》....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
坐って、東京日日新聞を読んでいた。老人は歴史小説が好きで、先月から連載中の塚原|
渋柿園氏作『由井正雪』を愛読しているというのである。半七老人のような人物が歴史小....
「海異記」より 著者:泉鏡花
て、ハタと横を払うと、発奮か、冴か、折敷ぐるみ、バッタリ落ちて、昔々、蟹を潰した
渋柿に似てころりと飛んだ。 僧はハアと息が長い。 余の事に熟と視て、我を忘れ....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
町まで行く。この日春の如く暖かなり。銀杏樹真黄色になりて美しく落葉地に敷く。また
渋柿の鈴なりが遠景に見えてこれまた美し。 古本屋にて石原純博士の「科学教育論」....
「武装せる市街」より 著者:黒島伝治
た。路ばたの草叢では蟋蟀が鳴き始めていた。家の前の柿の古樹の垂れさがった枝には、
渋柿が、青いまゝに、大変大きくなっていた。その下の闇を通ると、実がコツ/\と頭を....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
病人や死亡者を出した流行病の煩いから、みんなようやく一息ついたところだ。その年の
渋柿の出来のうわさは出ても、京都と江戸の激しい争いなぞはどこにあるかというほど穏....
「般若心経講義」より 著者:高神覚昇
無我の天地に参ずるならば、厭うべき煩悩もなければ、捨てるべき無明もありませぬ。「
渋柿の渋がそのまま甘味かな」です。
渋柿の渋こそ、そのまま甘味のもとです。
渋柿を離....
「艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
ぜといって、今気がついたことだが、あすこに真赤に熟しているのは、まがうようもない
渋柿だからである。 空は藍色に澄んでいる。陶器のそれを思わせるような静かで、新....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
とき、入口の幕をおし分けて、五十がらみの大きな男の顔がヌッと現われた。彼の顔は、
渋柿のように真紅であった。 「いやあ、これはお安くないところをお邪魔|仕りまして....
「江戸の化物」より 著者:岡本綺堂
まいますと、まるで嘘のように不思議なことが止んだということです。 これも塚原|
渋柿園の直話ですが、牛込の江戸川橋のそばに矢柄何某という槍の先生がありました。こ....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
のであった―― ところで……紅き、青き、また黄なる魚貝を手に手に、海豚が三頭、
渋柿をぶら提げたような恰好で、傘の辻から紅屋の店へ入ったが、私は法然頭の老主人を....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
が非常に詳しく書いてあった。これは誰が書いたのですと渡辺君に訊くと、おそらく塚原
渋柿園氏であろうと言った。わたしもそれをお手本にして書こうと思ったが、何分にもそ....
「三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
間もなく塚原老人に会った時に訊くと、「大変なものを見附けられた。アレはネ……」と
渋柿園老人は例の磊落な調子で、「島田の奴が馬を引張って来たので、仕方がないから有....