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渡りに船
「渡りに船〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
渡りに船の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
る間際《まぎわ》に、崩すべき第二の波の来ぬのを煩《わずら》っていた折であるから、
渡りに船の「え?」は心安く咽喉《のど》を滑《すべ》り出たのである。女は固《もと》....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
と口籠るばかりだ、叔父は見兼ねて「イヤ其の時は此の家へ御逗留なさる様に」高輪田は
渡りに船を得た面持で「そう願われれば此の上もない幸いです」と喜んだが、此の男を此....
「雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
――」
浪路の、しおれた風情に、サーッと活気がよみがえる。
雪之丞は、元より
渡りに船――一度は、三斎住居の模様をも、十分に見きわめて置き度いのだ。
「お言葉....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
るんだから」 こう言われてみると、是非善悪にかかわらず、この場合お松にとっては
渡りに船です。 「わたしも伯母さんに御相談していただきたいことがありますから、お....
「夜の靴」より 著者:横光利一
日もう一度来るという。そろそろ荷物の整理をし始めるよう私は妻に頼んだ。このような
渡りに船のことを、むかしは仏が来たと人人は思ったものだが、そう思えば、明日この人....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
、私が酔っています、か、お前さんは酔ってるね、だか分らない。 「やあ。」 と、
渡りに船の譬喩も恥かしい。水に縁の切れた糸瓜が、物干の如露へ伸上るように身を起し....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
して、鼻にかけるところまでは行ってなかったらしいが、駒井にとって、天の助けとも、
渡りに船とも、なんとも有難い唯一無二の羅針となったものです。この男がいなかろうも....
「マダム貞奴」より 著者:長谷川時雨
れこそ、新生活を開拓しよう、無人島へでもよいから行きつこうと思っていた夫婦には、
渡りに船の相談なので、一も二もなく渡航と定め、川上一座一行廿一人は結束して立った....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
をつきとめている唯一の人間……ということなどは思いもおよばないで、きかれるままに
渡りに船とばかりきょう尋ねて来た用むきをポツリ、ポツリと話し出したのだった。
....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
い未亡人が来て、自分の遣らせている塩湯はどうだろうと勧めてくれた。家人のためには
渡りに船であった。 塩湯というのは京橋|木挽町河岸にあった。そんなわけで鶴見は....
「四国遍路日記」より 著者:種田山頭火
竹籠を編んでいた主人公が、よかったら泊って行きなさい野宿よりましだろう、という、
渡りに船で泊めて貰う、板張、筵敷、さんたんたる住居である、そして夫婦のあたたかい....
「魔像」より 著者:林不忘
出して、わざと間違えたのか――とにかく金山寺屋の音松が、笑い出してそう言うから、
渡りに船とばかりに、ホッと張り詰めていた気を抜いた壁辰が、 「ははははは、金山寺....
「狂女と犬」より 著者:小酒井不木
やがて、村のとりつきにさしかかると、夜目にも小さな寺のあることがわかった。私は
渡りに船と喜んで、門のない寺の境内にはいると、ふと、どこからともなく、人間の声が....