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「温容〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

温容の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
省線電車の射撃手」より 著者:海野十三
警部は、青年探偵帆村荘六の和やかな眼をみた。事件の真只中に入ってきたとは思われぬ温容だった。彼は帆村を使うことを許した覚えはなかったが、それは多分帆村探偵の心づ....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
に司法省内の重要なる椅子を占め、尚外務書記官を兼ねているのでも分る通り英姿颯爽、温容を以て人に接し、辞令企まずして巧で、加うるに頭脳明晰眼光よく紙背に徹する明の....
ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
自分の心の中を気どられるような愚はしなかった。 しかもその際ヒルミ夫人は、その温容なマスクの下から、夫万吉郎の容姿や挙動について、鵜の毛をついたほどの微小なこ....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
何にしろとても逢われないものと思い込んでいた肉親の祖父が、元の通りの慈愛に溢れた温容で、泣き悶えている私の枕辺にひょっくりとその姿を現わしたのですから、その時の....
別れの辞」より 著者:豊島与志雄
何一つ身を入れて為すこともなく、莫大な親の遺産をもてあまし飲みつぶしてる、色白な温容な小肥りの長尾と、表向きは保険会社員だが、あらゆることに首をつきこみたがって....
情意の干満」より 著者:豊島与志雄
ルクスにさえも、否、大抵の人に多少とも……。そして私は、クロポトキンのあの精神的温容を想う。民衆を眺めるキリストの温眼を想う。 * さらば如何なる....
新時代の「童話」」より 著者:豊島与志雄
、ジンギスカン以後の七百年の眠りから蒙古民族を覚醒させんと夢想している徳王、その温容と熱情と知識と知慧、民衆中最高の文化と力との精神……私は彼を童話中の人物とし....
秦の出発」より 著者:豊島与志雄
ょっと始末をつけたいのです。」 秦は洪の眼を見返した。洪の眼はそれでも、静かな温容を湛えて、秦を見戍っていた。 沈黙が続いた。会談中に何回か運ばれた熱い茶が....
聖女人像」より 著者:豊島与志雄
祈りたい。 ――清子が側にいたら、この私の祈りを助けてくれるだろう。その無言の温容で、私に力づけてくれるだろう。黙って側にいることによって、それだけのことをし....
街はふるさと」より 著者:坂口安吾
をでたという荒波にもまれ通した子供が、なんのヒネクレた翳もなく、若年にして長者の温容を宿しているというのがわからない。 記代子も戦災で父母を失っていた。それ以....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
冷く凍りついた目であった。 島田幾之進もその眼光はただならぬが、そこには達人の温容がこもっていた。三次郎には、あたたかさ、甘さの影すらもない。日に一度顔を合わ....
稚子法師」より 著者:国枝史郎
一 木曽の代官山村蘇門は世に謳われた学者であったが八十二才の高齢を以て文政二年に世を終った。謙恭温容の君子であったので、妻子家臣の悲嘆は殆ど言語に絶したもので、征矢野孫兵衛、村....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
方の空に春がきても夏がきても四季の朝夕楽しき折りも、悲しき折りも、この二つの山の温容を眺めながら育ってきた。 二つの山は、私に取って豊艶な母の乳房にも譬うので....
小山内薫先生劇場葬公文」より 著者:久保栄
朗々としてわれわれの耳朶を打ちます。しかもわれわれは永久に、幽明境を距てた先生の温容に接することができません。 小山内先生 しかしわれわれ八十人の同志は、先....
新古細句銀座通」より 著者:岸田劉生
くそこで、高村光太郎君に会いビールのコップを林立させたものであった。高村君はあの温容をもって黙々としてただビールをのんでいた、ここの美人が今のタイガーのそれの如....