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温顔
「温顔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
温顔の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「HUMAN LOST」より 著者:太宰治
如く、むしろ快し。院主(出資者)の訓辞、かの説教強盗のそれより、少し声やさしく、
温顔なるのみ。内容、もとより、底知れぬトリックの沼。しかも直接に、人のいのちを奪....
「忠直卿行状記」より 著者:菊池寛
の感情を隠さず、顔に現しているのを見た。 「与四郎か! 近う進め!」と、忠直卿は
温顔をもってこういわれた。なんだか、自分が人間として他の人間に対しているように思....
「オリンポスの果実」より 著者:田中英光
オトを渡し、扉《とびら》を開けて出るのと殆《ほとん》ど同時でした。会長のK博士が
温顔をきびしく結ばれて、此方《こっち》に洋杖《ステッキ》の音もコツコツとやって来....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
検事は夙に令名のある小塚氏だった。小塚検事は多年刑事裁判に従事した人とは思えない
温顔に、流石に対手の心の底まで見抜くような透き通った眼で支倉を見据えながら、徐々....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
に入りの人たちだ。こんな顔ぶれを集めての催しである上に、主人の松雲は相変わらずの
温顔で、客に親疎を問わず、好悪を選ばずと言ったふうの人だ。 まず寺にも異状はな....
「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
郎を傍に迎えるというときは、まるで別人のようにキチンと身づくろいをし、玉のような
温顔をもって迎えるのであった。秋毫も夫万吉郎に、かき乱れたる自分の心の中を気どら....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
に穿いたのが、襖一杯にぬっくと立った。ゆき短な右の手に、畳んだままの扇を取って、
温顔に微笑を含み、動ぎ出でつ、ともなく客僧の前へのっしと坐ると、気に圧された僧は....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
しても、最大の注意を以て之を監視し、又警護する。同時に神の直属の天使達も、亦常に
温顔を以て之を迎え、露あやまちのないように、特別の保護を与えるであろう。 問『そ....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
も実務家ではなかった、彼は心理の方面に欠けてるところがあるために――(彼はいつも
温顔や甘言に欺かれがちだった)――彼女は業務にまったく無経験なために――(彼女は....
「勉強記」より 著者:坂口安吾
間とか、心とか、そういうものを感じる前に、いきなり肉体を感じてしまう。この世には
温顔という言葉があるが、その実際が知りたかったら、高僧にお会いするのが第一である....
「庶民生活」より 著者:豊島与志雄
いた私の方を、婆さんは横眼でじろりと見た。 おばさんはいつもの通りにこやかで、
温顔を崩さなかった。 「わたしは、ひとから何か頼まれると、いやと言えないたちでし....
「秦の憂愁」より 著者:豊島与志雄
、たいてい支那服の商人風な年輩者が多かったが、それがいずれも静粛で、おっとりした
温顔だった。星野は妙な気がした。これまで接した中国人はたいてい、饒舌で騒々しく、....
「本困坊・呉清源十番碁観戦記」より 著者:坂口安吾
丁先と言う。丁。本因坊、先である。 むしあつい。両氏、羽織をぬぐ。 本因坊、
温顔、美しい目に微笑をたゝえて、考え、石を下していたが、一時間ほどたち、十四手目....
「お母さんは僕達の太陽」より 著者:小川未明
も見るのであります。即ち、母親の言葉は、即ち将来への指導となり、その愛情に満ちた
温顔は、美の標準となり、また、母のしたことはすべて正しいと信じ、それが子供の心と....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
食卓が三列に流れ、中央のにはピアノを背にして船長が腰かける。船長はいかにも穏かな
温顔の人で、先ずは無口に近い。やや前|跼みでいつも黙々としてナイフとフオクとを使....