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渺
「渺〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
渺の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
が、ざわめく風の間には、海の音もおどろに寂しく響いている。よく言う事だが、四辺が
渺として、底冷い靄に包まれて、人影も見えず、これなりに、やがて、逢魔が時になろう....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
、雲が切れた、明いと思う処は、 「沼だ、ああ、大な沼だ。」 と見る。……雨水が
渺々として田を浸すので、行く行く山の陰は陰惨として暗い。……処々巌蒼く、ぽっと薄....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
空なる太陽に、礫の影一つなく、ただ白紙を敷詰めた光景なのが、日射に、やや黄んで、
渺として、どこから散ったか、百日紅の二三点。 ……覗くと、静まり返った正面の階....
「鷭狩」より 著者:泉鏡花
潟を見晴しの露台の誂ゆえ、硝子戸と二重を隔ててはいるけれど、霜置く月の冷たさが、
渺々たる水面から、自から沁徹る。…… いま偶と寝覚の枕を上げると、電燈は薄暗し....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
風雨の余残と聞いた。蘆の穂に、橋がかかると渡ったのは、横に流るる川筋を、一つらに
渺々と汐が満ちたのである。水は光る。 橋の袂にも、蘆の上にも、随所に、米つき虫....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
に六畳の附いた中古の十畳。障子の背後は直ぐに縁、欄干にずらりと硝子戸の外は、水煙
渺として、曇らぬ空に雲かと見る、長洲の端に星一つ、水に近く晃らめいた、揖斐川の流....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
た、この野雪与五郎。装束|澄いて床几を離れ、揚幕を切って!……出る! 月の荒野に
渺々として化法師の狐ひとつ、風を吹かして通ると思せ。いかなこと土間も桟敷も正面も....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
れば、雑誌編輯の用だと云って、こんな使いはしまいものを、お京め。と、隅田の川波、
渺々たるに、網の大きく水脚を引いたような、斜向うの岸に、月村のそれらしい、青簾の....
「湯女の魂」より 著者:泉鏡花
一枚、その外に雨戸が一枚、明らさまに開いて月が射し、露なり、草なり、野も、山も、
渺々として、鶏、犬の声も聞えませぬ。何よりもまず気遣わしい、お雪はと思う傍に、今....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
た、どこかに気高い処のある、年紀は誰が目も同一……である。 九 「
渺々乎として、蘆じゃ。お婆さん、好景色だね。二三度来て見た処ぢゃけれど、この店の....
「雪霊続記」より 著者:泉鏡花
った道でありました。が、私は夢中で、そのあとに続いたのであります。 路は一面、
渺々と白い野原になりました。 が、大犬の勢は衰えません。――勿論、行くあとに行....
「佐藤春夫氏の事」より 著者:芥川竜之介
なり。 四、佐藤の詩情は最も世に云う世紀末の詩情に近きが如し。繊婉にしてよく幽
渺たる趣を兼ぬ。「田園の憂欝」の如き、「お絹とその兄弟」の如き、皆然らざるはあら....
「初雪」より 著者:秋田滋
ていた。彼女はまた、自分の頭の上に大きく拡がっている、眼に泌みるような青い空と、
渺茫たる碧い碧い海原とをしばらく眺めていた。 やがて彼女はベンチから起ちあがる....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
、土手が著しく低くなって、一杯の潮は凸に溢れるよう。左手は洲の岬の蘆原まで一望|
渺たる広場、船大工の小屋が飛々、離々たる原上の秋の草。風が海手からまともに吹きあ....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
る雪の気勢を身に感じて、途中を思い出したかまた悚とした様子。座に言が途絶えると漂
渺たる雪の広野を隔てて、里ある方に鳴くように、胸には描かれて、遥に鶏の声が聞える....