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「渾沌〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

渾沌の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
のを快いと思っていた。汽車は目まぐるしいほどの快速力で走っていた。葉子の心はただ渾沌《こんとん》と暗く固まった物のまわりを飽きる事もなく幾度も幾度も左から右に、....
或る女」より 著者:有島武郎
欲念、そしてそれができそうな期待が葉子を未練にした。それからというもの葉子は忘我渾沌《ぼうがこんとん》の歓喜に浸るためには、すべてを犠牲としても惜しまない心にな....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
る漁夫たちも、今は東西の定めようがない。東西南北は一つの鉢の中ですりまぜたように渾沌としてしまった。 薄い暗黒。天からともなく地からともなくわき起こる大叫喚。....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
太初の何であるかを知らない私には、自身を措いてたよるべき何物もない。凡ての矛盾と渾沌との中にあって私は私自身であろう。私を実価以上に値ぶみすることをしまい。私を....
宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
前からあると考えられた/多くの場合に水が原始物質と考えられた/インドの創造神話/渾沌/卵の神話/フィンランドの創造伝説/洪水伝説/創造期と破壊期/アメリカの創造....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
と飜訳したものだそうだ。それと同じような意味を父の敬蔵は老荘の思想から採って、「渾沌未分の境涯」だといつも小初に説明していた。 瞼に水の衝動が少くなると小初は....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
年の努力の後、ようやく目的のものを得られたという。あの名魚「秋錦」の誕生は着手の渾沌とした初期の時代に属していた。 素人の熱心な飼育家も多く輩出した。育てた美....
春昼」より 著者:泉鏡花
ひらと大きくさす月の影、海の果には入日の雲が焼残って、ちらちら真紅に、黄昏過ぎの渾沌とした、水も山も唯一面の大池の中に、その軒端洩る夕日の影と、消え残る夕焼の雲....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
、気を取直して改めて、青く燃ゆる服の飾を嬉しそうに見た。そして立花は伊勢は横幅の渾沌として広い国だと思った。宵の内通った山田から相の山、茶店で聞いた五十鈴川、宇....
露肆」より 著者:泉鏡花
も、人の目鼻立ち、眉も、青、赤、鼠色の地の敷物ながら、さながら鶏卵の裡のように、渾沌として、ふうわり街燈の薄い影に映る。が、枯れた柳の細い枝は、幹に行燈を点けら....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
ことを回想していると、一八八四年のあのシーズンのことどもが異様に明暗入り乱れて、渾沌たる悪夢のように見えてくる。 ――可愛いキッティ・マンネリングのご機嫌とり....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
ているからである。もろもろの感覚によって起される執著が因となり種子となって幻想の渾沌を構成する。渾沌は渦動する。この渾沌たる幻想は漸くにして流動する生命に孕まれ....
荘子」より 著者:岡本かの子
南海に※という名前の帝があった。北海に忽という名前の帝があった。二人は中央の帝の渾沌を訪問した。渾沌は二人を歓迎し大へん優遇した。そこで客の二人は何とかして礼を....
岩波文庫論」より 著者:岩波茂雄
るところがあった。 ○ 今日世界の現状は政治、経済、思想各方面とも渾沌として帰向するところをしらない。平和は万人の望むところであるにもかかわらず、....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
――この驚駭、この動顛、この大畏怖、この寂光。 何とこの無人の、原始の、海獣の渾沌世界の、狂歓の、争闘の、蕃殖の、赤裸々の、瞬間の、また永遠の真実相であろう。....