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「湛える〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

湛えるの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
何だか非常に口惜しいと云う様子が見え、次には憫《あわれ》みを帯び来って両眼に涙を湛えるかと思われた、懐かしい情人の墓か、嫉ましい恋の敵の墓か、何しろ余ほど深く心....
遠い願い」より 著者:宮本百合子
けるものでなければならないと思う。そういう情感そのものが、世界史的規模をその底に湛えるものであって、日本の生活の端々をも瑞々しくとらえ深め描き出してゆく、そうい....
女性の歴史」より 著者:宮本百合子
自分の情熱によって破ろうとしなかった。ルネッサンスは、モナ・リザにああいう微笑を湛える人間的自由は与えたが、そのさきの独立人としての婦人の社会的行動は制御してい....
海の使者」より 著者:泉鏡花
げて来ると、じゅうと水が染みて、その破れ目にぶつぶつ泡立って、やがて、満々と水を湛える。 汐が入ると、さて、さすがに濡れずには越せないから、此処にも一つ、――....
太郎坊」より 著者:幸田露伴
もりで、今日に満足して平穏に日を送っている。ただ往時の感情の遺した余影が太郎坊の湛える酒の上に時々浮ぶというばかりだ。で、おれはその後その娘を思っているというの....
「青眉抄」について」より 著者:宮本百合子
惜しいという気が切にした。 護国寺の紅葉や銀杏の黄色い葉が飽和した秋の末の色を湛えるようになった。或日、交叉点よりの本屋によった。丁度、仕入れして来たばかりの....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
天の一方に、蒼沼の名にし負う、緑の池の水の色、峰続きの松の梢に、髣髴として瑠璃を湛える。 その心は色に出て、医師は小松原一人は遣らなかった。道しるべかたがた、....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
たらその不用な感情の屈曲がとれて、感性が自分の脚で立つようになって、従って心情に湛える力が出来、同じながら火野のプロフェショナルにひねこびたのとは違った工合にな....
幻覚記」より 著者:豊島与志雄
、柳の並木があり、低い手摺の外はじかに掘割であって、満潮の折には水が深々と寂寥を湛える。其処を歩いていると、電車路を走る自動車の音も耳を煩わさない。対岸には、小....
皇海山紀行」より 著者:木暮理太郎
いた。蒸気機関があり川があるから、湯でも水でも栓をひねればすぐ浴槽にあふれるほど湛える。これだけは実に贅沢だと思った。 二十日の朝はきわめて快晴で、外は霜が雪....
可愛い山」より 著者:石川欣一
傾斜して小さな盆地をなしている。佐野坂は農具川と姫川との分水嶺である。この盆地に湛える水は、即ち日本海に流れ入るのであるが、とうてい流れているものとは見えぬぐら....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
を見入っていうのだった。 「…………」 武蔵は、ただ唇の辺に、にやにやと笑いを湛えるのみで、どうとも、その解説を与えなかった。 そこで、沢庵がいうには、 「....