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「湧然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

湧然の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
人影も疎らなほどの裏淋しさ、象徴樹の籬が揺れ、枯枝が走りざわめいて、その中から、湧然と捲き起ってくるのが、礼拝堂で行われている、御憐憫の合唱だった。法水は館に入....
画室の言葉」より 著者:藤島武二
画題を読むことによって、それが深山の幽趣を描いたものであることを知り、興趣は更に湧然として尽きぬのである。 今一つの新羅山人画には次の如き画題がある。 周到....
一つの芽生」より 著者:宮本百合子
そして明かに力の感じとなって、死のうとする者、死なれようとする者に対しての愛情が湧然《ゆうぜん》と胸に充ち渡るのを感じたとき、自分は死の肯定によって一層強められ....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
らざる雰囲気の中において、あるとき、ある処に、光明を包んだ、艶消しの黄金色の紅が湧然として輝いた。その刹那、顫い戦く二つの魂と魂は、しっかと相抱いて声高く叫んだ....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
まエプソム町近郊の競馬場へ馳せ参じたわけだが、BEHOLD! 遠く望めば、混然湧然|轟然たる色調の撒布に、蚊ばしらみたいなひとつの大きな陽炎が揺れ立って、地に....
丹下左膳」より 著者:林不忘
かていちょう》一般《いっぱん》の春《はる》、か」 と忠相がひきとると、ふたりは湧然《ゆうぜん》と声を合わせて笑って、切りおとすように泰軒がいった。 「おぬしも....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
はいっさいできなかった。そしてその作品の構図を思いつくや否や、楽想《がくそう》は湧然《ゆうぜん》として湧《わ》いてきた。数か月来貯水池にたまっていた水量が、堤防....
スポーツの美的要素」より 著者:中井正一
ともいうべきものである。この境の会得は一回にして、しかも常にある種の香のごとく、湧然とゲームの始終にまつわるものであり、忘却の底に念々絶ゆることなく働きかくると....
放浪作家の冒険」より 著者:西尾正
まま微動だにしない。いったいなにごとがおこっているのだろうと、もちまえの好奇心が湧然とむらがりおこり、そっと体をずらせてななめに顔をおっつけ、女の顔をみるために....
松風の音」より 著者:和辻哲郎
っと困るが、実際に響きそのものが相当に違っているばかりでなく、それを聞いたときに湧然と起こってくる気分、それに伴う連想などが、全部違っているのである。 響きそ....
霊的本能主義」より 著者:和辻哲郎
しめて、峨々たる日本アルプスの連峰が蜿々として横たわるを見れば胸には宇宙の荘厳が湧然として現われる。この美この壮はもっとも強烈に霊を震※してそぞろに人生の真面目....
露伴先生の思い出」より 著者:和辻哲郎
とせずに、ゆっくりと舌の上でころがしていればよいのである。そのうちに、おのずから湧然として味がわかってくる。そういうやり方が、先生と一座していると、自然にうつっ....
地異印象記」より 著者:和辻哲郎
共にしているように思われたのである。天災に縛られていた人間の心が今や町全体の上に湧然と涌きのぼっているような心持ちである。が四谷の塩町に行くまでは自分はまだ幾分....