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湲
「湲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
湲の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
二里余りも来たら、山は自《おのず》から左右に逼《せま》って、脚下に奔《はし》る潺
湲《せんかん》の響も、折れるほどに曲るほどに、あるは、こなた、あるは、かなたと鳴....
「突貫紀行」より 著者:幸田露伴
かなか価安からず。かくてすすむほどに山路に入りこみて、鬱蒼《うっそう》たる樹、潺
湲《せんかん》たる水のほか人にもあわず、しばらく道に坐《ざ》して人の来るを待ち、....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
な俵形にこんもり形を盛り直している。 耳の注意を振り向けるあらゆるところに、潺
湲の音が自由に聴き出され、その急造の小|渓流の響きは、眼前に展開している自然を、....
「河明り」より 著者:岡本かの子
中の島公園の小松林が見渡せる大阪天満川の宿、橋を渡る下駄の音に混って、夜も昼も潺
湲の音を絶やさぬ京都四條河原の宿、水も砂も船も一いろの紅硝子のように斜陽のいろに....
「新釈諸国噺」より 著者:太宰治
めて猫背になり、川底までも射透さんと稲妻の如く眼を光らせて川の面を凝視したが、潺
湲たる清流は夕陽を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り、とても川底....
「ああ玉杯に花うけて」より 著者:佐藤紅緑
なんぞ英雄といいえよう」 ひつじは俄然虎になった。処女は脱兎になった。いままで
湲々と流れた小河の水が一瀉して海にいるやいなや怒濤澎湃として岩を砕き石をひるがえ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
五条橋を思い出させる擬宝珠附《ぎぼうしゅつ》きの古風な立派な橋で、宮川の流れが潺
湲《せんかん》として河原の中を縫うて行く、その沿岸に高山の町の火影が眠っている。....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
い。この松原の中を一散に走れば釜無川の岸である。そこには落ちて富士川となる水が潺
湲《せんかん》と流れている。 お銀様は、弁信を抱いたなりで、松原の中をひた走り....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
って下りる切石畳の一段二段を踏みました。都合五段ある石段を下りつくすと、そこに潺
湲《せんかん》と堀の水が流れている。その上に一隻の小舟がつながれている。 無言....
「香魚の讃」より 著者:佐藤垢石
の方から、釜無川は甲斐駒の方から、峡中を流れて鰍沢で合し、俄然大河の相を具現して
湲に移り潺に変わり、とうとうの響きを打って東海道岩淵で海へ注ぎ込む。富士川|下り....
「霊的本能主義」より 著者:和辻哲郎
かに地の花を輝らす。花は紅と咲き黄と匂い紫と輝いて秋の野を飾る。花の上月の下、潺
湲の流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神秘の声はひびく。遊子茫然とし....
「呼ばれし乙女」より 著者:岡本かの子
つの小さい窪みのできる乙女の手は、いま水晶を溶したような水の流れを遮る――水は潺
湲の音を立て、流勢が勝って手に逆うとき水はまた淙々と響く。 「よし」 暫くして....
「三国志」より 著者:吉川英治
二里ほど行くと、ちらと、林間の燈が見えた。幽雅な草堂の屋根が奥のほうに望まれ、潺
湲たる水音に耳を洗われながら小径の柴門を入ると、内に琴を弾く音がもれ聞えた。 ....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
これだったか。 青い青い空ではある。 汽車は駛る。 汽車は鉄橋にかかり、潺
湲たる清流の、やや浅い銀光の平面をその片側に、何かしら紫の陰影をひそませた、そし....
「秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
けて爪先下りに右の方へ二、三十間も行くと、※の固まったような河床を穿って、水が潺
湲と流れている。私達は始めて今朝来の渇を医することを得た。 丈に余る笹を押分け....