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満目
「満目〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
満目の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
、鼻づらを急に空へ向けると、忽《たちま》ち敵味方のごったになった中をつきぬけて、
満目の高粱畑《こうりょうばたけ》をまっしぐらに走り出した。二三発、銃声が後《うし....
「武蔵野」より 著者:国木田独歩
、青煙地を這《は》い月光林に砕く」
同十九日――「天晴れ、風清く、露冷やかなり。
満目黄葉の中緑樹を雑《まじ》ゆ。小鳥|梢《こずえ》に囀《てん》ず。一路人影なし。....
「東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
でこういう唄が残っているといった。 関の地蔵尊に詣でて、私たちは峠にかかった。
満目|粛殺《しゅくさつ》の気に充ちて旅のうら寂しさが骨身に徹る。 「あれが野猿の....
「灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
上げて、彼地此所に眼を配る消火夫の水に濡れると忽ち白い煙を渦立たして噴き出した。
満目唯惨憺として猛火の暴虐を語っていた。 焼けた材木を伝い、焼落ちた屋根の亜鉛....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
は翌九月二日の午前六時のこと。場所は、東京の真中新橋の上にちがいないのであるが、
満目ただ荒涼たる一面の焼け野原で、わずかに橋があって「しんばし」の文字が読めるか....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
鞘へ収まろうとするのである。もう世の中全体の浮気も一段落を告げ、もはや何を見ても
満目青いことである。それからだんだん自然の青さと暑さは増すばかりだ。 この青さ....
「妖僧記」より 著者:泉鏡花
いと少なく墓|守る法師もあらざれば、雑草|生茂りて卒塔婆倒れ断塚壊墳算を乱して、
満目|転た荒涼たり。 いつも変らぬことながら、お通は追懐の涙を灌ぎ、花を手向け....
「光は影を」より 著者:岸田国士
空しく生きた月日でございました。来る春も来る春も、花の色は打ち沈んで見えました。
満目蕭条の冬の野山こそ、わたくしの行く手にふさわしい眺めでございました。しかし、....
「明治の戦争文学」より 著者:黒島伝治
用せられ、歌はれ、描かれ写されつゝあるは、通例の事に属す。独り国民を挙つて詩化し
満目詩料ならざるなく、国民品性の極致を発露し口を開いて賛すべく、嘆すべく、歌ふべ....
「月世界跋渉記」より 著者:江見水蔭
。 実に見渡す限り磊々塁々たる石塊の山野のみで、聞ゆるものは鳥の鳴く音すらなく
満目ただ荒涼、宛然話しに聞いている黄泉の国を目のあたり見る心地である。 ....
「父の墓」より 著者:岡本綺堂
こへ来りし日は、枯野に吠ゆる冬の風すさまじく、大粒の霰はらはらと袖にたばしりて、
満目荒凉、闇く寒く物すごき日なりき。この凄じき厳冬の日、姪の墓前に涙をそそぎし我....
「西航日録」より 著者:井上円了
海の諸山、みな赤土を現出し、往々石骨を露出し、一つとして樹木の鬱蒼たるものなく、
満目荒涼、殺風景を極む。あたかも東洋諸邦の形勢を写出せるがごとし。しかるにシンガ....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
見る。しかして、後方の連山は白雪なお皚々たり。風光雄大、眺望絶佳、これに加うるに
満目凄涼蕭颯の趣ありて、太古の海山に接するの思いあり。その壮快実に極まりなし。と....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
一人の小姓を通知に側口へ廻らせたあと、折柄雪も止んで、利休の有名な瀟洒たる庭園も
満目白|皚々たる下に埋もれて単なる綿の取り散らしにしか過ぎない光景を、門越しに眺....
「釜沢行」より 著者:木暮理太郎
都門の春はもう余程深くなった。
満目の新緑も濁ったように色が濃くなって、暗いまでに繁り合いながら、折からの雨に重....