溝板[語句情報] »
溝板
「溝板〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
溝板の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
の三つ輪の髷《まげ》をぐいと引っ掴んだので、きゃっと云ってよろける拍子に、彼女は
溝板《どぶいた》を踏みはずして倒れた。その声を聞いて近所の人達が駈け付けたときに....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
も出て拝みなせえ。もうじきお月様があがるぜ」と、半七は声をかけた。 この途端に
溝板を踏む足音がきこえて、一人の男がここの格子のまえに立った。お亀がすぐに出てみ....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
いましたから」と、婆さんは苦々しそうに云った。 「いや、ありがとう」 あぶない
溝板を渡りながら路地の奥へはいってゆくと、甲走った女の声がきこえた。 「へん、意....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
腰から肩を乗出すようにして、つい目の前の、下水の溜りに目を着けた。 もとより、
溝板の蓋があるから、ものの形は見えぬけれども、優い連弾はまさしくその中。 笑を....
「ゴールデン・バット事件」より 著者:海野十三
くのを見た。こっちも負けずに、狭い家と家との間に飛び込んだ。飛びこんだはいいが、
溝板がガタガタと鳴るのに面喰らった。 露地内の一つ角を曲ると、アパートの裏口に....
「蠅男」より 著者:海野十三
われわれは、へいぜい目にも耳にもさとく、裏街の抜け裏の一つ一つはいうにおよばず、
溝板の下に三日前から転がっている鼠の死骸にいたるまで、なに一つとして知らないもの....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
秋らしい店の灯の光が撒き水の上にきらきらと煌めいたり流れたりしていた。果もの屋の
溝板の上には抛り出した砲丸のように残り西瓜が青黒く積まれ、飾窓の中には出初めの梨....
「食魔」より 著者:岡本かの子
た。彼は寂しく自宅へ近付いて行った。 表通りの呉服屋と畳表問屋の間の狭い露路の
溝板へ足を踏みかけると、幽かな音で
溝板の上に弾ねているこまかいものの気配いがする....
「空襲警報」より 著者:海野十三
がけない万歳の声に、靴屋のおじさんは、びっくり仰天したが、ハラハラと涙をこぼし、
溝板に立ちあがるなり、 「忠勇なる少年諸君、バンザーイ。……おじさんも仕事をはげ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
しい新地へ、風を持って来て、打着けたと思えば可い。 一軒、地のちと窪んだ処に、
溝板から直ぐに竹の欄干になって、毛氈の端は刎上り、畳に赤い島が出来て、洋燈は油煙....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
処にほしてあるものと想像された。半七はうなずいて元の入口に返った。 その途端に
溝板を踏むあしおとが近づいて、隣りのおかみさんに挨拶する男の声がきこえた。 「留....
「豆腐買い」より 著者:岡本かの子
で赤ん坊に乳を飲ましていた雀斑だらけの母親をも思い出した。 五六軒先の荒物屋の
溝板と
溝板の上のバケツや焙烙が鳴って十六七の男の子が飛出して来た。右側に通る電車....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
らず、右に三軒、左に二軒、両側の長屋はもう夜中で、明い屋根あり、暗い軒あり、影は
溝板の処々、その家もここも寂寞して、ただ一つ朗かな蚯蚓の声が月でも聞くと思うのか....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
たが、やがて声はせず、さるものの降るとも見えないで、木の梢も、屋の棟も、敷石も、
溝板も、何よりはじまるともなしに白くなって、煙草屋の店の灯、おでんの行燈、車夫の....
「とと屋禅譚」より 著者:岡本かの子
て、帳場に片肘かけながら銀煙管で煙草を喫っている。その上体を支えて洗い浄められた
溝板の上に踏み立っている下肢は薩摩がすりの股引に、この頃はまだ珍しい長靴を穿いて....