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「溢す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

溢すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
霜凍る宵」より 著者:近松秋江
。その人間などはまだそうして傍に置いとくことが出来ただけでも埋め合せがつく」私は溢すようにいうのであった。 「三野村さんのようここでお園さんが傍にいるところでい....
映画の語る現実」より 著者:宮本百合子
あるが、阿蘭は本当はああいう風な笑顔は決して持たないのである。あの笑いの瞬間に横溢する感情表現は、阿蘭の全生涯の歴史が別に書かれて来ているのでなければ阿蘭の体と....
ゴルバートフ「降伏なき民」」より 著者:宮本百合子
来ていた。ゆたかな声量と生粋のソヴェト人の歌好きのこころで「前線通信員」の活気横溢する歌をうたう、ゴルバートフ。一九一七年以後に成長して、社会主義建設の中で青年....
南地心中」より 著者:泉鏡花
して舞台を見い見い、片手を背後へ伸ばして、猪口を引傾けたまま受ける、注ぐ、それ、溢す。(わややな、)と云う。 そいつが、私の胸の前で、手と手を千鳥がけに始った....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
ある、おまけにいやに真直ぐだから、気のせいか、なお長い。 なんて、てくり愚痴を溢すくらいなら、早くタキシにでも乗ったらいいじゃないかと思うだろうが、いくら私が....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
る奇声、濁声。 4・PM。 じっとしていても汗ばむ太陽の赤光だ。 満場に横溢する力づよいざわめき。 切符の番号と見較べて席をさがす人々。 蒼穹に林立す....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
の深いブリリアントな忘我を愛するのだけれども。私の仕事が文字を突破してそこまで横溢することが出来たらどんなにうれしいでしょう。輝きわたる人間の真情のままが躍動し....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
出るのね。ロンドンやホイットマンもそうですし。新しい生活力が、或ときは悲劇的に横溢するからでしょうか。 『文芸』は六十数頁の小冊子となりました。苦心して編輯して....
後の業平文治」より 著者:三遊亭円朝
も、此の身さえ儘ならぬ無人島の主、思えば我が身ほど不運な者はない、いや/\愚痴を溢すところでない、海上にて彼の難風に出会い、幸に船は覆りもせず、此の島に漂い着い....
多神教」より 著者:泉鏡花
……居眠りいたいて、ものもあろうず、棺の蓋を打つよりも可忌い、鉄槌を落し、釘を溢す――釘は?…… 禰宜 (掌を見す)これに。 神楽の人々、そと集い覗く。 神職....
地上」より 著者:島田清次郎
に高く踴躍する。長い間二つの音色は戦った。戦いつつ、微妙な悲壮さは悠々たる力に充溢する。音楽はやがて急湍のように迫り、二つの音調は急流のように争いつつ、いつしか....
越後の闘牛」より 著者:佐藤垢石
ま牛方は即死だろう。格闘、真に必死の人間と猛牛の闘いだ。牛方の顔面に、男性美が横溢する。 ついに、牛と牛は左右へ遠く分けられた。人々は、陶酔からさめてほっとし....
早耳三次捕物聞書」より 著者:林不忘
死骸を結んで沈めたのだから、桶一杯の水が紫色に濁っていたが、三次が足を掛けて水を溢すと、底から、お菊の黒塗の日和下駄《ひよりげた》が片方だけ出て来た。 誰もお....
国会図書館の窓から」より 著者:中井正一
命の味は、また世代の一つの戦慄である。 自我を没し去って、全機露呈するときに横溢する働きの中の静寂は、ある意味において快いものがある。もちろん、敵もあれば、心....
チベット旅行記」より 著者:河口慧海
ありがたさに感じて共に苦行をしたいというのは誠に結構な事であると、私も彼らが涙を溢すと共に喜びの涙を溢しました。その翌日余り高くない波動状の山脈を五里ばかり進ん....