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溢る
「溢る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
溢るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
華族から娶り得たと云う――新夫人の二人が、二つ巴の、巴川に渦を巻いて、お濠の水の
溢るる勢。 「ちっとも存じませんで、失礼を。貴女、英吉君とは、ちっとも似ておいで....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
広がる国々の果てを抱かざりき。(注一) 空気あるところにはまた陸あり、陸にはまた
溢るる水ありて空気に光もなく 陸には立ち止まるべきわずかの場所もなく 水には泳ぐ....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
歩接近した。私は切に与うるの愛を主張したい。愛は欠けたるものの求むる心ではなく、
溢るるものの包む感情である。人は愛せらるることを求めずして愛すべきである。人に求....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
五郎 やあやあやあ! 鯰入 文箱の中は水ばかりよ。 と云う時、さっと、清き水流れ
溢る。 鯉七 あれあれあれ、姫様が。 はっと鯰入とともに泳ぐ形に腹ばいになる。蟹....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
指ついた状に、裾模様の松の葉に、玉の折鶴のように組合せて、褄を深く正しく居ても、
溢るる裳の紅を、しめて、踏みくぐみの雪の羽二重足袋。幽に震えるような身を緊めた爪....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
が濃くなって、小濁りに濁ると思うと、ずっと深さが増して、ふうわり草の生えた土手へ
溢るんだがね、その土手が、城趾の濠の石垣らしくも見えれば、田の畔のようでもあるし....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
現世の生活も、なかなか楽なものではなかったようで……。』 いかにもしんみりと、
溢るるばかりの同情を以て、何くれと話しかけてくださいますので、いつの間にやら私の....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
のであった。 四月三十日の午後、私はその時ほど血気と単なる動物的精力とを身内に
溢るるように感じたことはかつてなかった。キッティはわたしの様子が変わって快活にな....
「黄金の腕環」より 著者:押川春浪
えを聴くより、忽ち露子の腕を取って、其腕に玉村侯爵から贈って来た腕環を嵌め満面に
溢るるばかりの笑を湛えて、 「露子こそ最も勇ましき振舞をしたものだ、此腕環は和女....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
とし、瞬間出口にて振り返り、仆れし愛弟を凝視す。その眼には無限の思慕の情涙と共に
溢る……) 女子 (一声)ヨハナーン! (この声と同時に仆れしヨハナーン飛び起き....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
掘抜に繞らした中を、美しい清水は、松影に揺れ動いて、日盛にも白銀の月影をこぼして
溢るるのを、広い水槽でうけて、その中に、真桑瓜、西瓜、桃、李の実を冷して売る。…....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
る護謨布を蔽いかけた、小高い、およそ人の脊丈ばかりな手術台の上に、腰に絡った紅の
溢るるばかり両の膚を脱いだ後姿は、レエスの窓掛を透す日光に、くッきりと、しかも霞....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
ての島田|髷、背高く見ゆる衣紋つき、備わった品の可さ。留南奇の薫馥郁として、振を
溢るる縮緬も、緋桃の燃ゆる春ならず、夕焼ながら芙蓉の花片、水に冷く映るかと、寂し....
「涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
友の声が沈黙の重みをうちこわして、おおらかに放たれた。彼れはそのほのみえる顔に、
溢るるような悦びの色をたたえて言ったのだった。 「おい、俺たちはいつかは死んじま....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
語るか 日本の母を忘れて 忘るるもよしやわが児よ 育ち行くおまえの命、才分の弾ぜ
溢るるに 何しかも母の事など 忘るとも、よしやわが児よ おまえが母は「母観世音」....