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滲
「滲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
滲の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「葱」より 著者:芥川竜之介
、一陣の埃風《ほこりかぜ》が過ぎると共に、実生活のごとく辛辣《しんらつ》な、眼に
滲《し》むごとき葱の※《におい》が実際田中君の鼻を打った。
「御待ち遠さま。」
....
「白」より 著者:芥川竜之介
か? これでもか?」砂利は続けさまに飛んで来ました。中には白の耳のつけ根へ、血の
滲《にじ》むくらい当ったのもあります。白はとうとう尻尾《しっぽ》を巻き、黒塀の外....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
にした時、あらゆる革命に絶望していた。このことだけは今日もなお何か我我の心の底へ
滲《し》み渡る寂しさを蓄えている。夢は既に地上から去った。我我も慰めを求める為に....
「藪の中」より 著者:芥川竜之介
のの、胸もとの突き傷でございますから、死骸のまわりの竹の落葉は、蘇芳《すほう》に
滲《し》みたようでございます。いえ、血はもう流れては居りません。傷口も乾《かわ》....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
しまいました。そう云えば成程頭の上にはさっきよりも黒い夕立雲が、一面にむらむらと
滲み渡って、その所々を洩れる空の光も、まるで磨いた鋼鉄のような、気味の悪い冷たさ....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
母は私を見て弱々しくほほえんだ。私はそれを見ると何んという事なしに涙が眼がしらに
滲《にじ》み出て来た。それを私はお前たちに何んといっていい現わすべきかを知らない....
「星座」より 著者:有島武郎
はそのすぐそばで前後も知らず寝入っていた。丹前を着て、その上に毛布を被ってもなお
滲み透ってくるような寒さを冒して、清逸は「折焚く柴の記と新井白石」という論文をし....
「追憶」より 著者:芥川竜之介
はこのヒサイダさんに社会主義の信条を教えてもらった。それは僕の血肉には幸か不幸か
滲み入らなかった。が、日露戦争中の非戦論者に悪意を持たなかったのは確かにヒサイダ....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
や未来を蔑ろにするものではない。縦令蔑ろにしたところが、実際に於て過去は私の中に
滲み透り、未来は私の現在を未知の世界に導いて行く。それをどうすることも出来ない。....
「転機」より 著者:伊藤野枝
に揺り動かして吹き渡る。日暮近くなった空は、だんだんに暗く曇って、寒さは骨までも
滲み透るように身内に迫ってくる。 「せっかくお出でくださいましたのにあいにく留守....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
った水がいっぱいに詰まっているように感じられた。墓衣ばかりでなく、彼の体にまでも
滲み込んでいた死びとのような強い匂いはすぐに消えてしまい、とても一生涯癒りそうも....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
る気勢である。 「水差が漏るのかな……」 亀裂でも入っていたろう。 「洋燈から
滲出すのか……」 可厭な音だ。がそれにしては、石油の臭がするでもなし……こう精....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
うつらうつらした気分なのでございます。傍からのぞけば、顔が痙攣たり、冷たい脂汗が
滲み出たり、死ぬる人の姿は決して見よいものではございませぬが、実際自分が死んで見....
「アグニの神」より 著者:芥川竜之介
階の窓は、急にまっ暗になってしまいました。と同時に不思議な香の匂が、町の敷石にも
滲みる程、どこからか静に漂って来ました。 四 その時あの印度人の婆さ....
「浮世絵画家の肉筆」より 著者:上村松園
絵のもつあの艶美な夢心地のような韻致――と申しますか、匂いと言いますか、人の魂に
滲みこんでくるあの柔かな迫力は、どうも肉筆には見られないのでした。前に申しました....