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「滲む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

滲むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
母子叙情」より 著者:岡本かの子
忘れている規矩男ではなかった。厳格清澄なかの女の母性の中核の外囲に、匂うように、滲むように、傷むように、規矩男の俤はかの女の裡に居た。 今改めてかの女はかの女....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
君が、半分の獣血をみとめて、ドドを売れというのも……」 そのカークの言葉を身に滲むように聴きながら、座間はくらい海の滅入るような潮騒とともに、ひそかに咽びはじ....
恋愛曲線」より 著者:小酒井不木
その躍る姿を眺めて居ると、左手に少しの痛みをも覚えない。左手の傷から少しずつ血が滲む。その血を拭うためペンを措いて、ガーゼで拭かねばならぬ。おや、紙を血でよごし....
蟹工船」より 著者:小林多喜二
監督は「手を打って」喜んだ。今日勝った、今日負けた、今度こそ負けるもんか――血の滲むような日が滅茶苦茶に続く。同じ日のうちに、今までより五、六割も殖えていた。然....
夢鬼」より 著者:蘭郁二郎
来の「快活」を取戻したのだろうか――、それにしても、その稽古は余りに激烈な、血の滲むようなものだった。 黒吉の、少年らしく、まだ潤んだ眼は、蜘蛛の巣のような血....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
よ。夜半夢破れて枕に通う春雨の音に東都の春の濃やかなるを忍ぶとき、御身恋しの心は滲むがごとくに湧き出ずるなり。今宵月白し。花紅き籬のほとり、行人の声いと懐し。 ....
或る日」より 著者:宮本百合子
相談して置いた転地の話を前提もなしに切り出した。 彼女のむきな調子には何か涙が滲む程切迫つまったところがあった。余程急に出立でもしなければならないのか、又はそ....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
折のあなたが私を御覧になる独特の表情を思い出すと、切なかったことも思い出し、涙が滲むようだけれど、ひとりでに笑えもします。実にあなたは表情的なのを、その程度を、....
女性の諸問題」より 著者:倉田百三
かに私を臥させて、乳房を出して乳汁を目に二、三滴落してくれた。やわらかくまぶたに滲む乳汁に塵でチクチクしていた目の中がうるおうて塵が除れた。 亡くなった母を思....
自殺」より 著者:蘭郁二郎
覆って、しょぼしょぼと降り出して来た。折れ朽た雑草に、積り古りた落葉に、霙の解け滲む陰惨な音は、荒れ果てた曠野一面に響くかと思われた。そしてまた、薄黒い北風が、....
探偵小説の芸術性」より 著者:中井正一
冷たさの空間の中で斧がどうなっているかを考える精神である。理解さるる無意味、胸に滲む問い、ドストエフスキーの否定はそこにある。否定の精神のおもむろな成長が、世紀....
魔都」より 著者:久生十蘭
」へいらっしゃい、あなたの薄情を思い知らしたげるから」といって古市の手の甲へ血の滲むほど爪の先を突っ立て、 「どうだ、行くか行かないか。いやなら厭といって御覧な....
アリゾナの女虎」より 著者:牧逸馬
の時気の付いたことは、赤みがかった茶色の液体が、大きな方のトランクの合せ目から、滲むように流れ出て、床を這って居ることだ。 斯ういう場合の調査のために、鉄道会....
小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
も袒をくつろげて、腕の傷を朋輩に巻いて貰った。 「そこらに水はないか。」 眼に滲む血を洗おうとして、権右衛門はあたりを見まわすと、家来の一人はかの古沼に眼をつ....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
岐れ道をこうされて。 「畜生……」 又八は身をふるわした。 「畜生め」 涙が滲む。骨の髄から泣きたくなる。 なぜ! なぜ! おれはあの時宮本村の故郷へ帰ら....