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滴し
「滴し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
滴しの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「蠅」より 著者:海野十三
っと栓を抜いた。 「さあ、しめたッ」 私はそのひとたらしもない薬液を、口の中へ
滴しこんだ。それはたいへん苦い薬だった。 スーッと身に涼風が当るように感じたそ....
「雷峯塔物語」より 著者:田中貢太郎
を出た。府庁の門口には李幕事夫婦をはじめ、李将仕などが来て待っていた。許宣は涙を
滴してその人びとに別れの詞をかわして出発した。 三日ばかりして蘇州府へ着いた。....
「断橋奇聞」より 著者:田中貢太郎
れから老婆に伴れられて、老婆の女の家へ往った。女の夫や女が出てきて、ほうりだして
滴した酒壷の酒を温めてもてなしてくれた。 旅費に窮している世高は、そこで世話に....
「ドグラ・マグラ」より 著者:夢野久作
て、その中の無色透明な液体を、心持ち顔を反けながら、脱脂綿の一片の上にポトポトと
滴しました。それをまだお白粉の残っている少女の鼻の処へ、ソロソロと近付けつつ、左....
「旅愁」より 著者:横光利一
きどき考えるんだけど――でも、そんなものなのかしら。」千鶴子は紅茶を匙で掬っては
滴し滴しやはり沈んだ。
「何も僕はあなたの考えを、邪魔するつもりじゃありませんが....
「地獄の使」より 著者:田中貢太郎
い、すぐ出来るなら持って往ってやっても好い」 と、青鬼が云った。老婆はもう涙を
滴して口をもぐもぐさしていた。 「できます、できます、手許にはないが、親類にあず....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
して、ピンでわたしの腕を軽く刺して、そこから滲み出る血を吸いはじめました。二、三
滴しか飲まないのに、彼女はもうわたしが眼を醒ますのを怖れて、傷口をこすって膏薬を....
「蛇性の婬 」より 著者:田中貢太郎
屋を出た。府庁の門口には李幕事夫婦をはじめ李将仕などが来て待っていた。許宣は涙を
滴してその人びとに別れの詞をかわして出発した。 三日ばかりして蘇州府へ着いた。....
「地上」より 著者:島田清次郎
学者や群集は今日全く亡びてしまいました。しかし彼が十字架につけられ、肉身より血を
滴しつつ、ああ神よ、あなたはこの自分を捨て給うか、と叫んだその切ない叫びは未だに....
「春心」より 著者:田中貢太郎
」銚子を執って長吉の盃の近くへやり、「お嬢さんのお詞によって、注いであげるから、
滴しちゃいけないよ、一滴でもお銭だ、それも、みんな、私の汗と脂が入ってるのだ」 ....
「宇賀長者物語」より 著者:田中貢太郎
油をなみなみと入れた瓦盃を置いて、それに火を燈すのでありました。 「一滴でも油を
滴したら、これだぞ」と云って、長者は傍に置いてある赤樫の杖を揮って見せました。長....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
が雪煙を揚げ、後方へ離れあうと――どちらの身もまだ健在であって、白雪の大地に、一
滴しの血しおもこぼれていないことが、なんだかあり得ない奇蹟のようにしか思われなか....