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漁火
「漁火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漁火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「草枕」より 著者:夏目漱石
に朧夜《おぼろよ》の海がたちまちに開ける。急に気が大きくなったような心持である。
漁火《いさりび》がここ、かしこに、ちらついて、遥かの末は空に入って、星に化《ば》....
「縮図」より 著者:徳田秋声
れ立ち残雪の下から草の萌え出るその山へ登ることもあった。夜は沖に明滅する白魚舟の
漁火も見えるのであった。 銀子が少しおくれて二階へ上がって行くと、女中がちょう....
「二つの庭」より 著者:宮本百合子
そうにいっていらした」 「こないだうち、毎晩、なにをとっていたのか沖にずらりっと
漁火《いさりび》が見えてね、ほんとにあの景色はきれいだった」 伸子は、複雑な意....
「惜別」より 著者:太宰治
月光が河の靄に溶けて朦朧として、青黒い連山は躍り上った獣の背のように見え、遠くに
漁火がきらめいているかと思うとまたどこからともなく横笛の音が哀れに聞える。舞台は....
「土鼠と落盤」より 著者:黒島伝治
を、皆は、蓆を拡げ、坑木に腰かけなどしてそれ/″\休んでいた。カンテラは闇の晩の
漁火のようなものだった。その周囲だけを、いくらか明るくはする。しかし、洞窟全体は....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
ると、海が変って、太平洋を煽る風に、提灯の蝋が倒れて、めらめらと燃えついた。沖の
漁火を袖に呼んで、胸毛がじりじりに仰天し、やあ、コン畜生、火の車め、まだ疾え、と....
「「処女作」より前の処女作」より 著者:宮本百合子
凄い恋愛小説だったことだけは確かだ。 或る夜、海岸、恋している男と女とが、沖の
漁火を眺めながら散歩してる。女は、白い浴衣を着、手に団扇をもって、何とか彼とか男....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
やまめ」という句が入って居る。 ○ 能登の海に釣する海人の
漁火の光にい往く月待ちがてり 〔巻十二・三一六九〕 作者不詳 まだ月も出ず暗い....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
たのものかみ》城下の町灯がチラチラと、さては香取、津の宮の家あかりまで点々として
漁火《いさりび》のよう――。
それへ向かって、狭い浅い鞍川の河水が岩角をかんで....
「嵐」より 著者:寺田寅彦
を、ちぎれちぎれの綿雲は悪夢のように果てもなく沖から襲うて来る。沖の奥は真暗で、
漁火一つ見えぬ。湿りを帯びた大きな星が、見え隠れ雲の隙を瞬く。いつもならば夕凪の....
「早耳三次捕物聞書」より 著者:林不忘
はただ、寄せては返す潮騒が黒ぐろと鳴り渡って、遠くに松平肥後守様のお陣屋の灯が、
漁火《いさりび》と星屑とのさかいに明滅《めいめつ》しているばかり。女身を呑んだ夜....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
ち》の娼楼に時として燈火《とうか》を点じて水上に散在する白魚船《しらうおぶね》の
漁火《ぎょか》に対せしめよ。あるひは大《だい》なる夜泊《やはく》の船の林なす檣《....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
にして、暗色四面を鎖し、いよいよ我が船の小なるを想うのみ。眼に入るものは、二三の
漁火の星の如く、遠くちらつくと、稀に、銚子行汽船の過ぐるに当り、船燈長く波面に揺....
「舞子より須磨へ」より 著者:小川未明
を見守った。何処へ行くのだろうと思われた。また眼を転じて此方を見ると、ちら/\と
漁火のように、明石の沿岸の町から洩れる火影が波に映っている。 歩いて須磨へ行く....
「ひとりすまう」より 著者:織田作之助
たのだが、腰を上げるという簡単な動作の弾みがつかない、そんな状態だった。 と、
漁火の一つが、動き出した。静かに辷って行く灯を眼で追っていると、小さな浮島の陰に....