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漂う
「漂う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漂うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
ついじ》、それから、昔のまま、わずかに残っている松や柳――どれを見ても、かすかに
漂う死人《しびと》のにおいと共に、滅びてゆくこの大きな町を、思わせないものはない....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
《ふなばた》に倚《よ》って、音もなく流れる、黒い川をみつめながら、夜と水との中に
漂う「死」の呼吸を感じた時、いかに自分は、たよりのないさびしさに迫られたことであ....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
もありましたろう。始は水の泡のようにふっと出て、それから地の上を少し離れた所へ、
漂うごとくぼんやり止りましたが、たちまちそのどろりとした煤色の瞳が、斜に眥《まな....
「誘惑」より 著者:芥川竜之介
おのずから「磯ぎんちゃく」の充満した、嶮《けわ》しい岩むらに変ってしまう。空中に
漂う海月《くらげ》の群。しかしそれも消えてしまい、あとには小さい地球が一つ広い暗....
「或る女」より 著者:有島武郎
がらとは申せ今は過去のすべて未来のすべてを打ち捨ててただ目の前の恥ずかしき思いに
漂うばかりなる根なし草の身となり果て参らせ候を事もなげに見やりたもうが恨めしく恨....
「或る女」より 著者:有島武郎
うしてもそれは自分の面目《めんぼく》にかけて口には出せなかった。葉子は涙に解けて
漂うような目を恨めしげに大きく開いて黙って倉地を見返した。
「きょうおれはとうと....
「星座」より 著者:有島武郎
をもって、静かに最後の呼吸をしているようだった。枝を離れた一枚の木の葉が、流れに
漂う小舟のように、その重く澱《よど》んだ空気の中を落ちもせず、ひらひらと辷《すべ....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
しに押す風の激しさ強さが思いやられた。艫を波のほうへ向ける事も得しないで、力なく
漂う船の前まで来ると、波の山は、いきなり、獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
自然の貞淑な娘』であるところのイルマタール(Ilmatar)が蒼い空間の中に浮び
漂うていた。そして折々気をかえるために海の波の上に下り立った、というのである。こ....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
の黒い細い煙突の一つから斜にそれた青空をくっきりと染め抜いて、真白く一団の蒸気が
漂うて居る。ある限りの煉瓦の煙突からは真黒い煙がむくむくと立ち上って、むっとする....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
るりと長者園の浦を廻って、ちょうどあの、活動写真の難船見たよう、波風の音もせずに
漂うていましたげな。両膚脱の胸毛や、大胡坐の脛の毛へ、夕風が颯とかかって、悚然と....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
る下道を、黒白に紛るる女の姿、縁の糸に引寄せられけむ、裾も袂も鬢の毛も、夕の風に
漂う風情。 十八 「おお、あれは。」 「お米でございますよ、あれ、....
「雪霊続記」より 著者:泉鏡花
を打ち、鼻を捩じつつ、いま、その渦が乗っては飛び、掠めては走るんです。 大波に
漂う小舟は、宙天に揺上らるる時は、ただ波ばかり、白き黒き雲の一片をも見ず、奈落に....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
で。輪島からは海の上を、追立てられ、漕流されて、出稼ぎの売色に出る事。中にも船で
漂うのは、あわれに悲く、浅ましい……身の丈夫で売盛るものにはない、弱い女が流され....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
数町の上流なるにぞ、間も無く漕ぎ着きぬ。漁史は、錨綱を繰り放つ役、船頭は※鈎尖の
漂う加減に舟を停めぬ。日光水面を射て、まぶしさ堪えがたかりしも、川風そよそよと衣....