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漂わす
「漂わす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漂わすの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
》と石炭の火を燃え立たせて、窓|硝子《ガラス》につもる雪さえ、うす青い反射の光を
漂わす暇《ひま》もなく、溶《と》けて行った。そのストオヴの前に椅子を据えながら、....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
も小麦も見渡す限り穂になって、緑の畑は夜の白々と明ける様に、総々とした白い穂波を
漂わす。其が朝露を帯びる時、夕日に栄えて白金色に光る時、人は雲雀と歌声を競いたく....
「殺人鬼」より 著者:浜尾四郎
脅かす程の力をもつていると君は信ずるのかい」
藤枝はエーアシップの煙を室一杯に
漂わすのだつた。思えば彼も人がわるい。私にさんざんしやべらせておいて自分のシーオ....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
。 O市の春はようやく深し。今日の日曜を野径に逍遙して春を探り歩きたり。藍色を
漂わす大空にはまだ消えやらぬ薄靄のちぎれちぎれにたなびきて、晴れやかなる朝の光は....
「「迷いの末は」」より 著者:宮本百合子
或はずっとよく、そして巧に享楽もしつつ、退屈げな顔つきを日常の間にも作品の中にも
漂わす作家なのであろう。向うのことは何にも分らない、なりにこの人は落付いている。....
「寄席と芝居と」より 著者:岡本綺堂
朝の話術がいかに巧妙でも、今日のように電燈煌々の場内では、あれだけに幽暗の気分を
漂わすことが出来なかったかも知れないと察せられる。 暗い話のついでに云うが、そ....
「「草野心平詩集」解説」より 著者:豊島与志雄
えるけれど、知人を認めるとすぐに、如何にも嬉しげな笑みを浮べ、なつかしげな眼色を
漂わすところ、まさに心平さんなのである。その全体の風貌が、物事に拘泥せず、茫洋と....
「番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
で、半分ほど咲きかかった軒の桜が朧月の下にうす白い影を作っていた。その影をゆるく
漂わす夜風が生温く流れて、縁先に酔いざめの顔を吹かせていた播磨の袖の上に、月の雫....
「地上」より 著者:島田清次郎
ああ、ゆるやかにも力ある微笑よ。世界が根柢から揺り動かされる微笑よ。僅かに口辺に
漂わす一、二辺の微笑みから覗かれる、底の知れぬ偉大な力の海が冬子に押し迫る。 (....
「我が円朝研究」より 著者:正岡容
「支那の小説」云々とそれを匂わせることによってかえって、その原話とは別な真実感を
漂わすなど、作家としてもよほどの苦労人といわねばなるまい。 勇齋に死相ありと脅....
「霊的本能主義」より 著者:和辻哲郎
人を見て憤怒の念を起こす。綱の切れるはかまわない。ただかの冷ややけき笑いを唇辺に
漂わす人の頭に猛烈なる爆烈弾を投げたい。かの嘲笑に報いんためにはあえて数千の兄弟....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
翔り舞うその箔模様の美しきも眼に止めずして、茫々と暗路に物を探るごとく念想を空に
漂わすことやや久しきところへ、例の怜悧げな小僧いで来たりて、方丈さまの召しますほ....
「三国志」より 著者:吉川英治
った。さびのある声調と、血のかよっている意気が聞きとれる。 牧野の一戦、血、杵を
漂わす 朝歌一旦、紂君を誅す また見ずや 高陽の酒徒、草中に起こる 長揖山中隆準....