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漆
「漆〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漆の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
しき》とは、うさんらしく太郎のほうへ目をやったが、牛だけは、角《つの》をたれて、
漆のように黒い背を鷹揚《おうよう》にうねらしながら、わき見もせずに、のっそりと歩....
「伝吉の敵打ち」より 著者:芥川竜之介
っていた。すると、――急に便通を感じた。伝吉はやむを得ず藪《やぶ》かげへはいり、
漆《うるし》の木の下《した》へ用を足した。この一条を田代玄甫《たしろげんぽ》は「....
「水の三日」より 著者:芥川竜之介
それが何百|膳《ぜん》だかこてこてある。あとで何膳ずつかに分ける段になると、その
漆臭いにおいが、いつまでも手に残ったので閉口した。ちょっと嗅《か》いでも胸が悪く....
「路上」より 著者:芥川竜之介
擡げると彼の眼の前には、第八番教室の古色蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、
漆喰《しっくい》の剥《は》げた壁を濡らしていた。そうしてその玄関の石段の上には、....
「死後」より 著者:芥川竜之介
上に鳶口《とびぐち》が一梃《いっちょう》かかっていた。鳶口は柄《え》を黒と朱との
漆《うるし》に巻き立ててあるものだった。誰かこれを持っていたことがある、――僕は....
「白」より 著者:芥川竜之介
あの自動車を御覧なさい。ええ、あの公園の外にとまった、大きい黒塗りの自動車です。
漆《うるし》を光らせた自動車の車体は今こちらへ歩いて来る白の姿を映しました。――....
「或る女」より 著者:有島武郎
札がかかっていて、その向かいの左の戸には「No.12 早月葉子殿」と白墨で書いた
漆塗《うるしぬ》りの札が下がっていた。船員はつかつかとそこにはいって、いきなり勢....
「或る女」より 著者:有島武郎
つ》の形を直したりした。
昔の煉瓦建《れんがだ》てをそのまま改造したと思われる
漆喰《しっくい》塗りの頑丈《がんじょう》な、角《かど》地面の一構えに来て、煌々《....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
が三人を襲った。
遠慮会釈もなく迅風《はやて》は山と野とをこめて吹きすさんだ。
漆《うるし》のような闇が大河の如《ごと》く東へ東へと流れた。マッカリヌプリの絶巓....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
。ローマ人らは自分らに独特なものは何も持出さなかった。自然科学的教養はただ薄い仮
漆にすぎなかったのである。そうして国民の先導者らは文化に対する最も野蛮な暴行を犯....
「江戸か東京か」より 著者:淡島寒月
高かった。戦争の後ですから惨忍な殺伐なものが流行り、人に喜ばれたので、芳年の絵に
漆や膠で血の色を出して、見るからネバネバしているような血だらけのがある。この芳年....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
袖をひたりと立つと、真中に両方から舁き据えたのは、その面銀のごとく、四方あたかも
漆のごとき、一面の将棋盤。 白き牡丹の大輪なるに、二ツ胡蝶の狂うよう、ちらちら....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
一畝り畝らしたまで鮮麗に認められた。 前のは白い毛に茶の斑で、中のは、その全身
漆のごときが、長く掉った尾の先は、舳を掠めて失せたのである。 二十....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
へ移ってまいりました……。その時たちまち、右手に高く、御秘蔵の御神剣を打り翳し、
漆の黒髪を風に靡かせながら、部下の軍兵どもよりも十|歩も先んじて、草原の内部から....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
てはいろうとした。が、硝子戸は動かなかった。のみならずそこには「定休日」と書いた
漆塗りの札も下っていた。僕は愈不快になり、硝子戸の向うのテエブルの上に林檎やバナ....