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漆黒
「漆黒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漆黒の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「十八時の音楽浴」より 著者:海野十三
三人は黙々として、音楽浴のはじまるのを待った。 博士コハクは中年の男性――
漆黒の長髪をうしろになでたようにくしけずり、同じく
漆黒の服を着ている。身体はすん....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
木亮二郎は、思いの外、上品な、そして柔和な三十過ぎの青年紳士に見えた。しきりに、
漆黒の髪が額に垂れ下るのを、細い手でかき上げるのが、なんとはなしに美しかった。私....
「夜泣き鉄骨」より 著者:海野十三
く出てきた。 電纜工場を通りすぎると、その先は、文字どおりに、無人郷であった。
漆黒の夜空の下に、巨大な建物が、黙々として、立ち並んでいた。饐えくさい錆鉄の匂い....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
くなっていた。型の整った切れ目のしっかりした下膨れの顔に、やや尻下りの大きい目が
漆黒に煙っていた。両唇の角をちょっと上へ反らせるとひとを焦らすような唇が生き生き....
「怪星ガン」より 著者:海野十三
の塊がそれであります」とアナウンスの声に、三根夫は映写幕に目をうつした、なるほど
漆黒の大宇宙がうつっているが、その左下のところに、ぎらぎらと白熱光をあげている気....
「雷」より 著者:海野十三
の最も恐れをなす本格的の甲州雷だった。午後三時半には、比野町は全く一尺先も見えぬ
漆黒の雲の中に包まれ、氷柱のように太い雨脚がドドドッと一時に落ちてきた。それをキ....
「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
十前の女だった。蝋細工のように透きとおった白い顔、そして幾何学的な高い鼻ばしら、
漆黒の断髪、喪服のように真黒なドレス。ひと目でインテリとわかる婦人だった。 奇....
「妖僧記」より 著者:泉鏡花
一帯の壁に似たり、松杉を以て点綴せる山間の谷なれば、緑樹|長に陰をなして、草木が
漆黒の色を呈するより、黒壁とは名附くるにて、この半腹の洞穴にこそかの摩利支天は祀....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
したが、ふと気を着けると、袂は冷々と湿りを持って、塗れた砂も落尽くさず、またその
漆黒な髪もしっとりと濡れている。男の眉は自から顰んで、紅絹の切で、赤々と押えた目....
「明暗」より 著者:岡本かの子
て、ステッキをあしらって歩く眼明きの紳士風に、割り合いに軽快に歩けた。長身痩躯、
漆黒な髪をオールバックにした三木雄は立派な一個の美青年だった。眼鏡の下の三木雄の....
「瘤」より 著者:犬田卯
どうしてまたそんなことに――」 田辺が訊ねると、森平は薬罐頭を一振りふりたて、
漆黒の髯の中から唾をとばしつつ始めた。 「たまるもんかお前、あの大正六七年の好景....
「沼畔小話集」より 著者:犬田卯
彼は人がやっても、握り飯やふかし芋は口にしなかった。五十歳に近い彼が若者のように
漆黒の毛髪を持ち、三日間も立像化するエネルギーを把持しているというのは、全くこの....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
が手間取にこしらえる。一種、郷土玩具の手頃な獅子があって、素材づくりはもとより、
漆黒で青い瞳、銀の牙、白い毛。朱丹にして、玉の瞳、金の牙、黒い毛。藍青にして、黒....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
な囲炉裡がある。囲炉裡の中には電信柱ほどもある太い薪木が燻っている。上に吊された
漆黒な鉄瓶には、水の一斗も入るであろう。突当りは棚で、茶碗やら徳利やら乱雑に列ん....
「涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
と腰をおろした。冷やかな山上の夜は自分たちのうえに大きくかかっていた。晴れきった
漆黒の夜空のなかで、星が鱗屑のようにいろいろの色や光をしてきらめいていた。四人と....