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漏れ
「漏れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漏れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
《きつねいろ》だった。仁右衛門の淋しい小屋からはそれでもやがて白い炊煙がかすかに
漏れはじめた。屋根からともなく囲いからともなく湯気のように
漏れた。
朝食をすま....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
しかった。
昼過きになると戸外の吹雪は段々鎮《しず》まっていって、濃い雪雲から
漏れる薄日の光が、窓にたまった雪に来てそっと戯《たわむ》れるまでになった。然し産....
「星座」より 著者:有島武郎
指先にまるめてそっと押し拭った。それとともに、泣じゃくりのあとのような溜息が唇を
漏れた。
覚めてから覚えている夢も覚えていない夢も、母にはぐれたり、背《そむ》....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
限りに連なった地平線の低い葦原を一面におおうた霙雲のすきまから午後の日がかすかに
漏れて、それが、草の中からたった二本ひょろひょろとまとまった気分が行き渡っていた....
「親子」より 著者:有島武郎
出口はしなかった。いささかでも監督に対する父の理解を補おうとする言葉が彼の口から
漏れると、父は彼に向かって悪意をさえ持ちかねないけんまくを示したからだ。彼は単に....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
柔かい春の空気を快く吸い入れた。やがてポルタ・カプチイニの方にかすかな東明の光が
漏れたと思うと、救世主のエルサレム入城を記念する寺の鐘が一時に鳴り出した。快活な....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
にして僧侶の知恵の宝物は割合に速やかに増加していったが、その中から一般民衆の間に
漏れ広がったのは実に言うにも足りないわずかな小部分にすぎなかった。のみならず民衆....
「橋」より 著者:池谷信三郎
このチァイコフスキイのマズルカが、リラの発音で、歌詞のない歌のように、彼女の口を
漏れてくると、不思議な哀調が彼の心の奥底に触れるのだった。ことに橋を渡って行くあ....
「犬」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
に寝た。いつもと違って人間の香がする。熱いので明けてある窓からは人の呼吸が静かに
漏れる。人は皆な寝て居るのだ。犬は羨ましく思いながら番をして居る。犬は左右の眼で....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
処、ちょうどその寺の苔蒸した青黒い段の下、小溝があって、しぼまぬ月草、紺青の空が
漏れ透くかと、露もはらはらとこぼれ咲いて、藪は自然の寺の垣。 ちょうどそのたら....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
まり天津日継の皇子彦火々出見命様が、姉君の御婿君にならせられた事実を現世の人達が
漏れきいて、あんな不思議な浦島太郎のお伽噺に作り上げたのでございましょう。最後に....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
得ない道理は解めるが、焚残りの軸を何にしよう…… 蓋し、この年配ごろの人数には
漏れない、判官贔屓が、その古跡を、取散らすまい、犯すまいとしたのであった―― 「....
「大切な雰囲気」より 著者:石井柏亭
に彼の随筆集『大切な雰囲気』が刊行されることになった。これには『めでたき風景』に
漏れた、昭和二年から四年へかけての二三篇「国産玩具の自動車」「挿絵の雑談」「二科....
「活人形」より 著者:泉鏡花
の切抜戸を、内よりはたと鎖しける。 何をかなしけむ。壁厚ければ、内の物音外へは
漏れず。 ややありて戸を開き差出したる得三の顔は、眼据って唇わななき、四辺を屹....
「釣」より 著者:アルテンベルクペーター
お嬢さんなんというものは、釣のことなんぞは余り知らない。このお嬢さんもその数には
漏れないのである。 「退屈なら、わたししはしないわ。」こう云ったのは褐色を帯びた....